レオ・ベルジェール、ミドルディスタンスへの大いなる可能性 / アイアンマン70.3オーシャンサイドが開催

IRONMAN

「シーズンの開幕にグレートなメンバーがそろいましたね」
レースのインタビュアーを務めるグレッグ・ウェルチ(オーストラリア/1994年アイアンマン世界選手権<ハワイ>優勝、1990年ITU世界選手権<51.5km>優勝)も興奮を抑えられないようだった。

北米エリアの2023アイアンマン・シーズンのキックオフ・イベントとなるアイアンマン70.3オーシャンサイド大会が、4月1日に開催された。そんな中、ウェルチが示唆した理由には男子50、女子20を超えるトッププロたちがスタートリストにラインアップされていたからだ。

その中の目玉のひとりであったヤーン・フロデノ(ドイツ)は、レース直前にインフルエンザにかかり出場をキャンセル。彼のシーズン復帰戦は5月のPTOヨーロピアンオープン(スペイン・イビザ島/ミドルディスタンス)に持ち越されることになっている。

そんな男子レースの主役の座についたのはフランスのレオ・ベルジェールだった。
2021年の東京オリンピック出場(21位)。昨年5月に横浜で行われたワールドトライアスロン・チャンピオンシップシリーズ(WTCS/写真下)で3位に入り、同11月にUAE・アブダビで実施されたWTCSファイナルの男子エリートで優勝。シリーズランキング1位に輝いたショートのスペシャリスが、ミドルディスタンスでどのような走りを披露するのか。
注目が集まる中、レース距離が伸びても世界トップレベルと対等に渡り合えるパフォーマンスを披露して見せた。

温暖なカリフォルニアでの開催だったものの、水温13℃という厳しいコンディションの中で、スイムスタートからリードを奪ったベルジェール。ライバルたちが苦しむ中、1.9kmを22分10秒でフィニッシュしてオープニングを飾る。

いまだに語られる昨年大会の激しい男子2位争い。ルディ・ヴォンバーグ(アメリカ/左・3位)、ライオネル・サンダーズ(カナダ/右・2位)の勝負は写真判定にもつれ込んだ

昨年、同大会で2位と3位との差が0.1秒以内で、写真判定にもち込まれるという凄まじいデッドヒートが繰り広げられたレースは、今年もバイクでベルジェール、ミドルが得意なサム・ロング(アメリカ)、ディフェンディングチャンピオンのジェイソン・ランドリー(カナダ)などが迫り合いを展開。
そんな中、勝負を決めたのがベルジェールのトータル・パフォーマンスだった。

優勝したベルジェールと2位のジェイソン・ウエスト(左/アメリカ)、3位のジャクソン・ランドリー(右)

「実はスイム途中で日の出が眩しくて苦労した上に、ずっとトップグループと渡り合うのに大きなエネルギーを費やしていたので、非常にハードなレースでした」と振り返ったベルジェール。今年はすでに3月3日のWTCSアブダビ大会に出場(6位)。その後レース距離を延しての参戦だったことを考慮すると、タイム差以上に強さを感じさせるパフォーマンスともいえ、今後の可能性を大いに感じさせる内容だった。
引き続き彼の主戦場はWTCSになるのだろうが、ミドルディスタンスではフロデノとの勝負が近々見られるかもしれない。

【プロ男子レース結果】
1位 Léo Bergère (FRA)  3:45:25
2位 Jason West (USA)  3:45:37
3位 Jackson Laundry (CAN) 3:47:38
4位 Ben Kanute (USA)  3:49:38
5位 George Goodwin (GBR) 3:50:35

女子のレースを征したのはタマラ・ジュエット(カナダ/写真上)。
同じく今シーズン初戦となり注目を集めていた2022年アイアンマン世界選手権(ハワイ)チャンピオンのチェルシー・ソダーロ(アメリカ)にラン勝負で決着をつけた価値あるポディウムの中央。バイク・ペナルティで30秒の足止めを課せられたあと、ランで1時間13分00秒(ハーフマラソン)の驚異的なタイムを叩き出しての逆転勝利だった。

2位のソダーロ(左)、ジュエット、そして感激の復活劇を演じたカット・マシューズ(右)

昨年のコリンズ・カップでは思うような成績が残せず、悔しさで涙を浮かべた姿が印象的(写真下)だったが、今年は PTOレース でも笑顔が見られるだろうか。

そして今回のレースで最も声援を浴びたであろう選手が、3位に入ったカット・マシューズ(イギリス/写真下)だ。
昨年5月にアメリカ・ユタ州セントジョージで行われた アイアンマン世界選手権 で2位を獲得し、同年10月のアイアンマン・ハワイでさらなる飛躍を目指すも、レース直前にバイクトレーニング中の事故で大ケガを負うという不運に遭遇。そこからの復活劇だった。

レース後マシューズは、「コース上のすべての人に感謝します。みんなの歓声が私に一日走り続けるための勇気を与えてくれました」と、感情を抑えきれなかったよう。順調に行けば3週間後のアイアンマン・テキサスに臨み、アイアンマン・ハワイの出場権獲得を目指すという。

さあ2023シーズンが本格的に動き出した。

【プロ女子レース結果】
1位 Tamara Jewett (CAN)  4:08:09
2位 Chelsea Sodaro (USA) 4:09:31
3位 Kat Matthews (GBR)   4:12:27
4位 Holly Lawrence (GBR) 4:16:32
5位 Paula Findlay (CAN)   4:21:52

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