2022年のワールドトライアスロン・チャンピオンシップシリーズ(WTCS)の開幕戦となった5月14日の横浜大会。女子に続き13時06分からスタートした男子エリートの日本人選手では、昨年東京オリンピック出場の小田倉真(三井住友海上)が9位に追い上げ、大いにレースを盛り上げた。
バイク終了時には出場者ほぼ全員が集団となる混戦に。そこから日本人選手では、まず北條巧(NTT東日本・NTT西日本)がトップグループでランをスタート。しばらくして、ニナー賢治(NTT東日本・NTT西日本)も上位を伺える位置につけるなど、沿道の応援者に大きな期待を抱かせた。(写真下)
ただレースが進むに連れふたりの順位は後退し、代わって後半に小田倉が、「久しぶりの世界トップ選手とのレースだったので、(ラン)序盤は手探りでのペーシングでしたが、中盤過ぎから上げていけました」と粘り強く順位を上げ、ラストのスパート合戦を経てシングル順位を獲得。ただ、レース後のインタビューでは意外な葛藤も吐露していた。
「今回は東京オリンピック後の初レースで、自身のトライアスロン人生第二のスタートという位置づけでした。昨年の五輪後に3カ月ほど休養をとったのですが、その間いろいろなことが頭をよぎり、『自分はトップで世界と戦うのには相応しくないのかな』と引退することも考えていたのです」(小田倉)
「その間、東京五輪のVTRを何度も見ました。そうしているうちに、敵わないと思っていたトップ選手たちに対して、少しやりかたを工夫すればまだまだ(差を)詰めていけるのではないか、という思いが芽生えてきたんです。そしていろいろな方にも相談して、続けていくことを決めました」
現状は、いきなり「パリを目指す」というのではなく、一歩一歩ステップを積み上げていくイメージだという。
「その過程で、いろいろな自分の可能性にチャレンジしていければとも考えています。将来はアイアンマンなどロングのレースにも挑戦したいですし」という。
昨年の同レースではオリンピック出場を確実のものとし、キャリアのターニングポイントになった。そして今年また同じ横浜で、次のステージへの大きな鍵をつかんだような印象であった。
さて、ラン勝負に持ち込まれたトップ争いは、序盤からイギリスのアレックス・イーとヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)の激しい一騎打ちに。お互い、一歩も引かずフィニッシュ目前まで勝負はもつれたが、最後はランのキレを生かしたイー(写真下)が接戦をものにしトップでテープを切っている。
【アイアンマン70.3世界記録保持者、マルテン・ファンリールをキャッチ】
今回 TRIATHLON LIFE が気になった選手のひとりにベルギーのマルテン・ファンリールがいる。オリンピックディスタンスを主戦場にしながらも(昨年は東京五輪にも出場)、今年3月の アイアンマン70.3ドバイ で、3時間26分06秒という世界記録を樹立。そのポテンシャルの高さを世に知らしめており、彼に今後のレース予定などについて聞いてみた。
「ショートとミドルの両立は私には難しいかな。今はミドルは比較的対応できる自信があるのですが、ショートに難しさを感じています。オリンピックディスタンスはますます厳しくなっている。バイクでは決着がつきにくく、ランでの決定力がさらに重要になっているので、その部分を強化しなければなりませんね。
70.3の世界選手権ですか? う〜ん、ちょっとそれはまだ何とも。これまで同様51.5kmを中心にやっていく予定で、パリ・オリンピックを目指すのが第一の目標なので。2024年以降はアイアンマンもあり得ますね」(ファンリール)
彼のコメントを聞くと、クリスティアン・ブルンメンフェルトのすごさがさらに伝わってくるようでもあった。
【エリート男子・上位リザルト】
1位 アレックス・イー(イギリス) 1:43:30
2位 ヘイデン・ワイルド(NZ) 1:43:40
3位 レオ・ベルジェール(フランス)1:43:59
9位 小田倉真 1:45:02
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