PTOとワールドトライアスロンが提携してロングディスタンス世界選手権ツアーを来年開催

PTOレース

ワールドトライアスロンと Professional Triathletes Organisation(PTO/イギリスに拠点を置くトライアスロン機構)は、ロングディスタンス・トライアスロン世界選手権ツアーを実施することで提携し、2024年シーズンにシリーズ戦を展開すると発表した。これによりエリート&エイジの来年のカレンダーに新たな基軸が加わることとなる。

PTOは昨年から “PTOツアー” と称して、主にスイム2km、バイク80km、ラン18kmをベースとしたプロとエイジカテゴリーを有したいわゆるミドルディスタンスのイベントを実施。
今年は5月の スペイン・イビザ島、8月初旬の アメリカ・ミルウォーキー、そして8月19・20日のシンガポールと3レース開催を発表していた。

8月4日、5日にアメリカ・ミルウォーキーで行われた PTO USオープンの男子プロではヤーン・フロデーノが完全復活を果たし大きな注目を集めた

今回発表された “ロングディスタンス・トライアスロン世界選手権ツアー” は、既存のPTOツアーのイベントフォーマット(S2km/B80km/R18kmのノンドラフティングレース)をベースに、開催規模を拡大して展開されることになる。
PTOの担当者によるとアジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニア、そしてアフリカの5大陸にまたがるシリーズ戦となる模様で、それぞれ大陸選手権大会としての実施も目指す。
そしてシリーズ最後のチャンピオンシップ大会を含む少なくとも6レースが催される予定だ。

プロカテゴリーでは高額賞金レースとしても知られるようになったPTOツアー

今回発表された内容を要約するとこうなる。
・プロカテゴリーとすべてのアスリートが参加できるエイジ・レースの併催
・S2km/B80km/R18kmのノンドラフティングレース
・世界5大陸にまたがる年間6レース以上のシリーズ戦
・シリーズ最終戦としてチャンピオンシップ大会(世界選手権)を実施
・プロの世界チャンピオンは全シリーズの獲得ポイントにより決定
・エイジのチャンピオンシップイベント出場資格は各国の基準に委ねる
・全シリーズなどの詳細は今年10月に発表

今後、8月26日・27日のアイアンマン70.3世界選手権(フィンランド・ラハティ)に続き、ロングでは9月10日のアイアンマン世界選手権 Men(フランス・ニース)、10月のアイアンマン世界選手権 Women(ハワイ)を控える。
それを前にしての2024年ロングディスタンス世界選手権ツアーのアナウンスとなるが、実は昨年から今回の素地はつくられていたようだ。

まず、昨年8月にスロバキアで実施された2回目のコリンズ・カップ(PTO主催/写真上)だ。
このレースでは、あとになってワールドトライアスロン主催の “マルチスポーツ世界選手権” が、コリンズ・カップ開催期間中に実施されることが発表され、ロングディスタンス・トライアスロンやアクアスロンの世界選手権が行われている。
一部コースは異なるものの、いずれも大会会場は同じで、それぞれの開催日に合わせてイベント装飾を使い分けるなど工夫を凝らしていた。(2枚のタイトル写真も同じフィニッシュ会場で撮影したもの)
当時はまだコロナ禍にあり、イベント開催が困難を極める中での会場シェアだったともいえる。

ちなみに、2021年に始まった前出のコリンズ・カップについて、主催者は「2023年のPTOツアー(3レース)成功に集中するため行わず、来年以降の実施を目指す」という、どうも歯切れのよくない理由で今年休止としていた。
今回、ロングディスタンス世界選手権ツアーの催行が決定したわけだが、これによりコリンズ・カップのレースフォーマット(チーム対抗)運営はさらに難しくなったと考えられる。

一方で、2023年のマルチスポーツ世界選手権は、ワールドトライアスロンがスペイン・イビザ島での5月開催を早々に発表。その後を追うかたちで PTOヨーロピアン・オープン大会が同島で実施されている。
イビザ島での大会は、それぞれレース会場自体は別であったが、スロバキアに続き2年連続でPTOとワールドトライアスロンのイベントが同じエリア、同じ期間での開催になっていたわけだ。

この時系列を追うと、PTOとワールドトライアスロンが提携することは何ら不思議なく、そして今回のイベント実施の発表に至ったというわけであろう。

いずれにせよ来シーズン、トライアスロン界に新たな舞台が提供されるわけで、関連者にとっては8月19・20日に開催される PTOアジアン・オープン(シンガポール)の動向にも注目が集まることになる。

8月4日のアメリカ・ミルウォーキーで行われた PTO USオープンで、バイク終了時に脚のケイレンを抱えながらも3位に入ったクリスティアン・ブルンメンフェルト

ところで、そのシンガポール大会の出場者リストの中には、あたり前のようにクリスティアン・ブルンメンフェルトの名が記載されている。
彼は8月18日にフランスで行われるパリ五輪のテストイベントに出場するのだが、PTOシンガポール大会の男子レースは8月20日開催。最短で移動しても8月19日にシンガポール着となり、常識的には(出場は)考えられないのだが果たしてどうするのか。
そうでなくとも、ブルンメンフェルトはディフェンディングチャンピオンとして、8月27日にフィンランド・ラハティで開催されるアイアンマン70.3世界選手権に名を連ねており、いずれにせよ常人離れしたスケジューリングとしか表しようがない。

一方、女子を見てみると、テイラー・二ブ(アメリカ/写真上)が8月5日にアメリカ・ミルウォーキーで行われたS2km/B80km/R18kmのレースに優勝したあと、同じくパリ五輪のテストイベントに出場。そして、こちらも2022年アイアンマン70.3世界選手権覇者としてフィンランド・ラハティ大会にリスティングされている。

今回、ロングディスタンス・トライアスロン世界選手権ツアー開催が発表され、選手活躍の舞台が増えていく最中、こういった対応力が世界トップのスタンダードになっていくのだろうか?

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