TDFに見るパリ五輪を走る先端バイク③ 【トレック・新型 Madone / アレックス・イー編】 〜 トライアスリートのためのツール・ド・フランス2024 特集 〜

TDF for Triathlete

7月30日、31日に実施されるパリ五輪・トライアスロン競技。その中にあって、使用されるバイク・メーカーのシェアで上位を占めるであろうモデルで、直近に『新型』が発表されているのがトレックの Madone(マドン)と キャニオンのAeroad(エアロード)だ。
ここでは、オリンピック開幕の1週間前に終了したツール・ド・フランス(TDF)ですでに実践投入されている 新型Madone に注目。現地フランスでキャッチした最前線の情報、注目のスペックなどをリポートする。

アレックス・イー(イギリス)
【使用バイク】トレック / 新型Madone
東京五輪2020・男子2位、混合リレー金メダルに輝いているアレックス・イー(イギリス)。
今回のオリンピックはヨーロッパ開催ということで、より多くのサポーターも駆けつけるはずで一層パフォーマンスに磨きがかかることだろう。
以前からトレック・ユーザーだった彼が7月末の決戦に用意したのが新型の Madone(写真下)だ。

今年のTDFに実戦投入された新型の Madone 。前モデルから大きく進化したスペックで存在感を放っていた

一方、新型Madone に乗り、女子レースで注目を集めそうなのがアメリカのテイラー・ニブ(写真下)。東京オリンピック2020の混合リレーで銀メダルを獲得。そしてアイアンマン70.3世界選手権で2度のチャンピオンに輝き、昨年のアイアンマン世界選手権(ハワイ)では4位入賞。無限の可能性を秘めたスーパー・アメリカンは今回、トライアスロン女子レースのわずか4日前、つまり7月27日のロード女子・個人タイムトライアルに出場しており注目を集めていた。

その個人TTの結果は、残念ながら雨の悪コンディションの中、3度の落車に見舞われて本来のパフォーマンスを出しき切れないままレースを終了。それでも出場34人中19位というリザルトは、ロードレースでも第一線で渡り合える実力をもつ証左といえるだろう。
まずは7月31日の女子レースに、元気な姿で登場してくれることを信じよう。

昨年のアイアンマン・ハワイで初挑戦ながら4位というリザルトを残し、2025年に再び世界選手権挑戦を表明しているニブ

以上の有力選手たちがパリ五輪に投入するのが新型の Madone である。
では、この革新的な進化を遂げたフラッグシップ・バイクの全容を、TDFのレースパドックで得た最前線情報を中心に紹介しよう。

《ツール・ド・フランスで使用するチーム》
 リドル・トレック(アメリカ)

これまでトレック・ロードバイクのハイエンドモデルは、エアロロードの Madone と軽量オールラウンダーの Emonda(エモンダ)の2系統に分かれていた。
前作の Madone は第7世代モデルにあたり、斬新なエアロ機能を搭載するなどで注目を集めていた。
その新型となる Madone はトレックのバイク史においてさらなる革新性を打ち出している。

TDF最終ステージの個人タイムトライアルで用意された Madone のTT仕様モデル。山岳色の強いコースに合わせたアッセンブルだった

それは Madone の空力性能と Emonda の軽量化の融合。これまでの Emondaラインが無くなり、ロードのフラッグシップは新型Madone に1本化されたという点だ。ゆえに今年、TDFでのリドル・トレックはタイムトライアルを除く全ステージで、この新型Madone を使用したわけである。

左が2023年TDFでの前作Madone、右が2022年の Emonda。それぞれのストロングポイントをフィードバックし、1台に凝縮したモデルが新型の Madone とも表現できるだろう

『平地から山岳まで、あらゆるコースプロフィールに高い走行性能で対応できるオールラウンド・バイク』
エアロ、そして軽量バイクの2種類を使い分けるのではなく、すべてのコースを1台(1種類)で走りきれるモデルの開発はピナレロやコルナゴを筆頭に、スペシャライズド、そしてキャノンデールなど、ここ数年のメーカー・ラインアップのトレンドとなっている。
それでは、その新型Madone(写真下)のポイントを紹介していこう。

“トータルでのエアロ性能向上” にフォーカスしたデザイン
これまでのフレーム開発の場合、ヘッドチューブやダウンンチューブの形状、フロントフォークのブレード幅など各部位ごとでデザイン解析し、空力性能や剛性を高めるアプローチが主流といえただろう。
一方で新型Madone はバイクの空力性能をライダーを含めた一体型として考えて測定。剛性や重量とのバランスも精査しつつ最適解のフレームデザインを具現化している。

たとえばボリュームのあるヘッドチューブ。この一部分だけを測定すると空気抵抗は嵩張るのだろうが、チューブ前面から後ろへと流れていき風を受けるライダーの抵抗値までを考慮し、デザインされている。

四角いダウンチューブ
エアロバイクの定石として、ダウンチューブは断面が縦に扁平型で、全体的に丸みを帯びたボリュームあるデザインが多いイメージがあるが、新型Madone は四角い細身のチューブ形状だ。高速走行中にこの部分が受ける気流を解析し、エアロ性能と軽量化とのバランスを高めた形状にデザインされているという。

リアまわりのエアロ形状に注目
フロントチューブやダウンチューブに対して、シートポストやシートチューブは(正面から見て)縦に薄い形状に。やはり、リアへと流れる空気の抵抗軽減を考えたデザインといえるだろう。

伝家の宝刀 “ISO FLOW”
この後方への気流の通りを決定づけるのが、シートチューブ下にホール形状にデザインされた『ISO FLOW』。前モデルから搭載され、その特徴的なデザインから話題を呼んだ機能はさらにブラッシュアップされている。
また、走行時の振動吸収性にも一役買っている点も見逃してはいけない。

エアロボトル&専用ボトルケージ
もはやロードバイクでも定石になりつつある、エアロボトル採用によるアドバンテージ。もちろん、ノーマルのボトルにも設置対応できる。

この新型Madone は今後、ロードバイクのフラッグシップ・モデル開発の方向性に大きな影響を与える可能性は高い。つまりは各メーカーが、エアロ&軽量性能を高いレベルでバランスのとれた1モデルに集約していくということ。
そのトレンドの決定打になるのかもしれない。

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