PTO アジアン・オープンが開催 / 男子優勝はブルメンフェルト。『パリ五輪テストイベント ⇒ PTO レース ⇒ 70.3世界選手権』の驚愕スケジュール! “BIG BLU” の ビッグ・ウィークとなるか

PTOレース

先日、ワールドトライアスロンと提携して、ロングディスタンス・トライアスロン世界選手権ツアー を2024年にスタートさせると発表した Professional Triathletes Organisation(PTO)。これは今シーズン 3レース展開している PTOツアーを拡大(開催地を増やす)させた形式になる予定となる。

その今年3レース目(シリーズ最終戦)となる、PTO アジアン・オープンが8月19・20日にシンガポールで開催された。(※写真をタップするとフルサイズで見られます)

シンガポールの新たなランドマークとなっている マリーナ ベイ シンガポール をバックに走る選手たち

2023年PTOツアーは5月にスペイン・イビザ島、8月初旬にアメリカ・ミルウォーキーの都市部で開催。
先述の注目を集めている 2024ロングディスタンス・トライアスロン世界選手権ツアー概要は10月に公表されるとのことだが、こういった観光地や景勝地などロケーションが映えるイベント、都市圏などが選定され実施されることになるのだろう。

レース前に行われた選手会見にあわせ、メトロポリタンな光景をバック撮影にされたメディア向けショット。有数の観光地を舞台に繰り広げられるイベントに、出場者たちのリラックスした表情も印象的だった

写真では見えていないが、大会会場はマーライオンが立つ入江の対岸エリアを舞台にして、スイムがスタートする

このシンガポール大会は、複数年契約により来年の実施も決まっている。つまり、2024年スタートするロングディスタンス世界選手権のシリーズ戦に組み込まれ、5大陸で行われるというツアーのアジア大会となるわけだ。

【アイアンマン世界選手権覇者&オリンピアンが戦いを繰り広げるミドルディスタンス】
まず、8月19日に女子プロのレースが実施。この記念すべきオープニング大会を制したのがオーストラリアのアシュリー・ジェントルだった(写真下/中央)。

2021年までは主にショートディスタンスで活躍。リオ五輪(26位)、2021年の東京オリンピック(DNF)にも出場し、コロナ禍を経てターゲット距離を延長。
スイム2km/バイク80km/ラン18kmをベースとしたPTOレースでは2022年にアメリカ、そしてカナダ大会で優勝するなどミドルディスタンスの中心選手のひとりと目されているジェントルが、持ち前のスピードを活かしてバイクでライバルたちから抜け出し、そのままトップでフィニッシュした。

2位はドイツのアンネ・ハウク。バイクのメカトラブルで2分30秒のタイムロスを跳ね返してのポディウム(表彰台)を獲得。
そして3位にはシーズン前半の不調からの巻き返しを果たしたチェルシー・ソダーロ(アメリカ/写真下)が入った。

2位、3位の両名はハワイのアイアンマン世界選手権(2019年/ハウク、2023年/ソダーロ)の勝者。
一方で8月5日に行われた PTO・USオープンでは、先日のパリ五輪テストイベントの結果(5位)で、2024年パリオリンピック・アメリカ代表の座を獲得したテイラー・ニブが優勝している。
PTOレースは幅広いジャンルのアスリートが相見えるフォーマットであり、つまりはロングディスタンス世界選手権ツアーも、こういったマッチアップが多々見られることになるだろう。
<プロ女子レースリザルト>
1位 Ashleigh Gentle (AUS) 3:41:16
2位 Anne Haug (GER)  3:43:32
3位 Chelsea Sodaro (USA) 3:46:10
4位 Imogen Simmonds (SUI) 3:47:06
5位 Lucy Charles-Barclay (GBR) 3:48:00

【1カ月でミドル×3レース + パリ五輪テストイベント出場の衝撃】
続く8月20日に行われた男子レースは “BIG BUL(ビッグ・ブル/彼のメディア界での愛称)” クリスティアン・ブルンメンフェルト(ノルウェー)の独壇場だった。
彼は8月18日にフランス・パリで行われた五輪テストイベントに出場。そして19日の午後にシンガポール入りしている。現実的には18日午前に行われたレース終了後、午後の便に飛び乗り、10時間以上のフライトを経て現地に入るしか方法はなく、しかも6時間の時差が(パリと)生じる中、トータル100kmのレースに挑んだことになる。

女子のレース時の水温は30℃超え。男子も高温の中での非常にタフなコンディションとなっていた

常識では考えられないことをやってのけるのが、ブルンメンフェルトが “BIG” と称される所以でもあるのか。
昨年、アイアンマン・ハワイ2位のサム・レイドロー(フランス)、アイアンマン70.3世界選手権2位のベン・カヌート(アメリカ)など、こちらも並いる競合がしのぎを削る中バイクで2位につけ、ランで圧勝劇に持ち込む横綱相撲でトップフィニッシュ。
最後のラン18kmは1時間29秒(キロ3分21秒ペース)で走破してみせた。

2021年の東京五輪を制し、1年経たぬ間(2022年5月)にアイアンマン世界選手権(アメリカ・ユタ州セントジョージ)で優勝。同年にアイアンマン70.3世界選手権(セントジョージ)のタイトルも獲得するなど、まさに規格外の能力を知らしめていた彼であったが、意外にもPTOのツアーレースはまだ勝利がなかった。
それだけに、「何としてでもPTOツアーのタイトルが欲しかった。そのためにシンガポールに来たんだ」とブルンメンフェルト。

8月末のアイアンマン70.3世界選手権のあとは、パリ五輪まで一直線に突き進むことになるわけで、目前のラストチャンスを逃したくなかったという思いが彼を動かしていたようだ。

そうなのである。
ブルンメンフェルトは8月27日にフィンランド・ラハティで行われるアイアンマン70.3世界選手権にディフェンディングチャンピオンとして出場するために、シンガポールのレース後、再びヨーロッパへと飛んでいるのだ。

1週間強で3レース。
さらに彼は8月4日のPTO・USオープンにも出場(バイク終了時に脚にケイレンを発した中での3位)しており、1カ月でミドルディスタンス3レース、そしてパリ五輪テストイベント(51.5km)に出場することになる。

これを何と形容すべきなのか。規格外のひとことでは片付けられない、まさに驚愕のスケジューリングといえるだろう。
世界のトライアスロンメディアの目が、週末のフィンランドに向けられている中、彼の一挙手一投足にも注目が集まっている。

ブルンメンフェルトに引けを取らないランパフォーマンスを有するジェイソン・ウェスト(アメリカ)は3位を獲得した

<プロ男子リザルト>
1位 Kristian Blummenfelt (NOR) 3:20:48
2位 Pieter Heemeryck (BEL) 3:22:47
3位 Jason West (USA)   3:24:03
4位 Denis Chevrot (FRA) 3:29:00
5位 Sam Long (USA)   3:29:11

なお、このPTOツアーは高額賞金レースとしても有名でそれぞれ男女上位入賞者に下記の設定がなされている。
・1位/10万ドル(約1,450万円)
・2位/50,000ドル
・3位/35,000ドル
・4位/20,000ドル
・5位/14,000ドル
・6位/10,000ドル
・7位/8,500ドル
・8位/8,000ドル
・9位/7,500ドル
・10位/7,000ドル

また、PTOツアーはこれらプロレースとあわせてエイジレース(シンガポール大会はデュアスロンも実施)が行われている。プロの賞金額はともかく、来年のロングディスタンス世界選手権ツアーも同じフォーマット(プロ、エイジカテゴリーの併催)で行われることが決まっており、注目しておきたいシリーズ戦となるだろう。

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