アイアンマン・プロシリーズが4月に開幕。今シーズン、PTOの “T100” レースとの2大シリーズが誕生

IRONMAN

昨年の10月、ちょうどハワイのアイアンマン世界選手権のレースウィーク中に発表されていたアイアンマン・プロシリーズが、4月6日の70.3オーシャンサイド大会(アメリカ・カリフォルニア/写真下)からスタートする。

右上に掲載されている新たなマークに注目。プロシリーズ・イベントとして開催される大会にはこのデザインが加えられることとなる

これは年間で指定されたアイアンマンとアイアンマン70.3の合計20レースを対象とし、高額の賞金がかけられたランキングシステム。
具体的なスケジュールは上記の70.3オーシャンサイドから12月のアイアンマン70.3世界選手権(ニュージーランド・タウポ)まで。詳細大会は下記となっている。

これらのプロカテゴリーで出場したフルディスタンス、70.3レースそれぞれのリザルトによって設定されたポイントの獲得合計数(2024年出場の上位5レースまでの合計で、そのうちフルディスタンスは最大3レースまでカウントできる。つまりその場合、70.3大会の上位2レースまで加算が可能)により、男女プロのシリーズランキングを決定するというシステムだ。
その年間順位により、男女1位にそれぞれ20万ドル(約3,000万円)、2位に13万ドルと順に賞金が支払われ10位には1万ドル。そして11位〜50位には一律5,000ドルと、男女総額で170万ドルが用意されるという。

2024年シーズンは世界選手権のチャンピオンとは別に、プロシリーズの年間チャンピオンが12月に誕生。こちらは12月のニュージーランド・タウポでの70.3世界選手権後に確定する

もちろん上記20大会のプロカテゴリーではこれまでどおり各々のレース賞金が設定されている。つまり通年で争われるプロシリーズの上位ランカーは、年末にボーナス賞金を獲得できる構図とも表現でき、これらすべての合計額(20レースそれぞれの入賞賞金+プロシリーズ賞金)は427.5万ドル(約6億5,000万円)になるとアイアンマン・グループは発表している。
これによりプロ選手たちの指定アイアンマン・シリーズへの出場意欲は高まることだろう。端的に言うと、多くのレースに出場して上位に入賞すれば、自ずと年間プロシリーズのランキング成績に直結する可能性が高まるからだ。

そして、これらにともないオフィシャルのホームページも誕生。
全20レースは、シリーズ・オフィシャルサイトでの無料ライブストリーミングや Outside WATCH 、さらには欧州アイアンマンはフランスのエキップ・ライブなどで視聴ができる。

>> アイアンマン・プロシリーズのオフィシャルサイト

注目を集める2大シリーズレース
ところで、プロ選手対象の高額賞金レースといえば Professional Triathletes Organisation(PTO/イギリスに拠点を置くトライアスロン機構)の歴代イベントが挙げられる。
今シーズンからは、そのPTOとワールドトライアスロンが提携してスイム2km、バイク80km、ラン18kmのシリーズ戦『T100 トライアスロン・ワールドツアー』をスタートさせており、すでにアメリカ・フロリダ州マイアミで第1戦が行われた。

今年1月にロンドンで行われた T100トライアスロン・ワールドツアー の特別発表会に出席したルーシー・チャールズ – バークレー(右)とアリスター・ブラウンリー。この新たなイベントの大きな可能性に期待を込めていた

こちらのほうは全8レースで、各シリーズ戦ごとに賞金25万ドル(約3,600万円)が設定されている(男女1位に各360万円、2位に230万円など)。お金の話ばかりで味気ないかもしれないが、それに加え、年間シリーズのランキング対象者に総額200万ドル(2億9,000万円)が用意され、男女総合の1位選手は各21万ドル(3,000万円)を獲得することができる。

ミドルディスタンスのレースならば出場選手の幅も広がるだろう。プロ選手たちにとってここまで紹介してきた賞金レース&シリーズ、しかも “高額” がつくイベントが増えることは望ましく、競技の活性化につながることは間違いない。

一方で、これらレースの出場資格を有するプロ選手たちの年間スケジュールにも注目が集まっている。
たとえばアイアンマンの世界選手権。今年は9月22日にフランス・ニースで女子レース、10月26日にハワイ島・コナで男子レースが行われるわけだが、9月28・29日には T100トライアスロン・ワールドツアーのイビザ大会、10月19・20日には同じく T100ラスベガス大会 が実施される。
つまり、アイアンマン世界選手権ニースの翌週に T100レース、世界選手権ハワイの前週にも T100 が開催されることとなる。
消耗が激しいロングディスタンスのレースをメインターゲットとした場合、連戦、特に女子の場合は ニース → イビザ のスケジュールは不可能といえ、この例からも、特にミドル〜ロングを主戦場にしているトッププロたちの予定に大きなインパクトを与えることなるだろう。

その代表格といえるのが昨年、悲願のハワイ制覇を成し遂げたルーシー・チャールズ – バークレー(写真上)だ。
彼女は、今シーズンは T100トライアスロン・ワールドツアー に集中するとコメントしており、9月のニース大会(アイアンマン世界選手権)には出場しないだろうと発表していた。

仮に彼女が9月のニースに出場しないとなると、アイアンマン史上としては前代未聞。故障や引退、やむを得ない私的な理由などを除き、前年のアイアンマン世界選手権チャンピオンが、開催地が変わるとはいえタイトル防衛となるレースの出場を見合わせるというのは過去に例を見たことがないだろう。
それだけT100シリーズの位置付けが大きいという表れだろうが、今回のチャールズ – バークレーのアナウンスに関係者がザワついたのも事実だった。

ただ、いずれにせよプロ選手の活動フィールド、そして獲得できる賞金の可能性が広がることは関係者にとってプラスに働くことは間違いない。そんな世界トップカテゴリーのトライアスロンシーンは転換期を迎えているとも見てとれるだろう。

【アイアンマン・プロシリーズのイントロYouTube】

関連記事一覧

おすすめ記事

過去の記事ランキング

  1. 1

    国内大会からまたハワイへの道が開かれる日が!2023年日本でアイアンマン開催実現に期待しよう!

  2. 2

    アイアンマン ジャパン みなみ北海道。2024年9月15日(日)開催を目指し実行委員会が立ち上がる / 日本にフルディスタンスのアイアンマンが帰ってくる!

  3. 3

    ブルンメンフェルトの強さ&速さの秘密とは?【前篇】/宮塚英也のトライアスロン“EYE” 〜トライアスロン・トレーニングの鉄則〜

  4. 4

    クリスティアン・ブルンメンフェルト アイアンマン・7時間21分12秒の衝撃 / 世界記録を更新

  5. 5

    2023年のアイアンマン・ハワイも2日開催に。シリーズ全17大会で女性スロットを拡充

  6. 6

    最速TTバイク/五輪を制した “サーヴェロ・P5” を検証する

  7. 7

    フェルトの新型トライアスロンバイク 2022年の注目モデルをチェック

  8. 8

    トライアスリートのためのツール・ド・フランス特集2020 速攻TTバイクリポート

  9. 9

    アイアンマン ジャパン みなみ北海道 の2024年9月15日開催が正式にアナウンス / エントリーは12月19日の午前9時よりスタート!

  10. 10

    アイアンマン70.3東三河ジャパン in 渥美半島 が6月10日(土)に開催!/ 世界選手権への道(フィンランド・ラハティ)も日本から!

おすすめ記事 過去の記事
  1. 【 IM世界選手権ハワイ】チーム “ソダーロ”。挑戦の第二章 / ハワイ注目選手 ②

  2. 《Hawaii 特集》10月9日(日本時間未明)にアイアンマン・ハワイ男子プロがスタート / クリスティアン・ブルンメンフェルトの同一年世界選手権制覇なるか(男子プロ有力選手展望)

  3. ツール・ド・フランス2021特集 タデイ・ポガチャルのTTバイクをチェック 〜コルナゴ/K.ONE 〜

  4. 【Harry’s Shots 2024】 全日本トライアスロン宮古島大会

  5. IMセントジョージ特集 / 宮塚英也のトライアスロン“EYE” 『今週末のアイアンマン世界選手権の注目点はここだ』

  6. 沖縄キッズトライアスロン【動画リポート】

  7. 《Hawaii 特集》チェルシー・ソダーロ / アメリカン・ニューヒロイン誕生の瞬間 〜アイアンマン・ハワイ女子プロレースレポート〜

  8. アイアンマン ジャパン みなみ北海道。2024年9月15日(日)開催を目指し実行委員会が立ち上がる / 日本にフルディスタンスのアイアンマンが帰ってくる!

  9. トライアスリートのためのTDF【TTバイク・番外編】スタート前のレースパドックをチェック

  10. 【コリンズ・カップ特集】五輪メダリスト5名 vs. アイアンマン世界選手権覇者4名 vs. 70.3世界選手権チャンプ3名 / 規格外の “コリンズ・カップ 2022” が開催

  1. トライアスリートのためのツール・ド・フランス特集2020 エアロロードという選択肢

  2. ツール・ド・フランス2021特集 2年目の『バブル』を迎える世界最大の自転車レース

  3. ツール・ド・フランス2021に見る東京五輪を走るバイク① 〜バンサン・ルイ編〜

  4. 【動画】チーム&クラブ訪問/Team BRAVE 編(兵庫)

  5. 賞金総額1億3,500万円! PTOカナディアン・オープンがいよいよ開催

  6. コリンズ・カップはトライアスロンの新たな歴史を刻んだか?

  7. ツール・ド・フランス2021特集 レースを支える応援者は“もうひとりの主役”

  8. 2023年のアイアンマン・ハワイも2日開催に。シリーズ全17大会で女性スロットを拡充

  9. トライアスリートのためのツール・ド・フランス特集2020 ブレーキシステムのトレンドを追う

  10. 東京五輪のコロナ対策でフォーカスすべき “Bubble (バブル)” とは?

TOP