TDFに見るパリ五輪を走る先端バイク① 【 キャニオン・新型AEROAD CFR / ヘイデン・ワイルド編】 〜 トライアスリートのためのツール・ド・フランス2024 特集 〜

TDF for Triathlete

いよいよ7月末からパリ五輪が始まる。トライアスロンは7月30日に男子レース、31日に女子レースが実施。セーヌ川を泳ぎ、シャンゼリゼ通りなど数々の名所が舞台となるレースの見せ場のひとつがバイクパート。各国選りすぐりのトライアスリートたちが究極のバイクを駆り疾走する。
一方、オリンピック開幕の1週間前に終了したたツール・ド・フランス(TDF)を見てみると、今回の五輪に出場するトライアスリートと同じメーカー・モデルを使用しているサイクリングチームは多い。それらはどのようなスペックで投入されているのだろうか? バイクの特性とともに、TDF現地から最前線の情報をリポートする。

© Akihiko Harimoto

ヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)
【使用バイク】キャニオン/AEROAD CFR

五輪直前のワールドトライアスロン・ランキング7位。WTCS横浜大会に優勝も含め幾度も表彰台に上がるなど、相性の良さで日本でもお馴染みのヘイデン・ワイルドは、昨年よりキャニオンと契約。AEROAD CFR でトップを走り続けている。
五輪本番で新型CFRが使用されるのかはわからないが、オリンピック直前に日本でもプレミアム公開が予定され、注目を集めている状況。
TDFではすでに実践投入されており、トップチームが使用するバイクをもとにそのポイントを紹介していこう。

《ツール・ド・フランスで使用するチーム》
 アルペシン・ドゥクーニンク(ベルギー)

 モビスター(スペイン)

百聞は一見にしかず。今回のツールで注目のひとりだったアルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(オランダ)の新型AEROAD CFR(ホワイトフレーム)に注目し、レースパドックでキャッチした情報を交えて紹介しよう。
ロードレース、シクロクロスの世界チャンピオンに輝く二刀流。欧州クラシックレースを幾度となく制しているマチューはまさにスーパーライダーだ。
チームメカニックによると「もちろんビッグレースに合わせてのチームとしての新型投入だけど、何よりも走行性能が格段に上がったことがレースで有利に働くこと違いなしだね」とのこと。

今年のツールでは新型のバイクも強い存在感を示していたマチュー・ファンデルプール

一方で、写真下は昨年のツールのときのカット。前モデルのCFR(グリーンフレーム)となる。
ライダーはヤスペル・フィリプセン(ベルギー)。昨年ツール・ステージ4勝を挙げ、今年もステージ優勝をもぎ取っている強力スプリンターだ。
この新旧モデルを比較しつつ、新型CFRの進化を見ていくこととしよう。

昨年、ステージ4勝を挙げたヤスペル・フリプセンの前モデルCFR

前面から見ると分かりやすい、さらに研ぎ澄まされたエアロシェイプ

新型モデルの特徴を端的に表すと『さらるエアロ効果の向上と走りを科学したフレーム剛性のアップ」だ。

その要因はもちろんフレームデザインの進化なのだが、正直なところ一見しただけでは新旧モデルの違いは分かりにくい。一方で、その特性をフォーカスしやすいのは正面から見たときのデザイン。フロントフォーク幅、ヘッドチューブなどが新型(写真上)はよりシェイプ(幅が細く)されており、全投影面積が削減されているのが分かるだろうか。(前モデルは写真下)

さらにブレード形状のフロントフォークの横幅は前作と比べて幅がさらに広がり、剛性を上げることに成功しているという。(写真下)

新型CFR(写真上)はフロント剛性も上がり、走行安定性がさらに高まっている

シートステー接合部の強化とシートポスト位置の変更
新型CFR(写真下)はシートステーの接合部分が強化され、リブ形状ともえるデザインに仕上げられている。
またシートポスト位置は、前作と比べて僅かながらではあるが前方に移動。これは近年のトップサイクリストのロードポジションが前乗り傾向にあることを受けての変更だろう。よりペダルを組み込むパワーを生み出すための細かいブラッシュアップといえる。

トップチューブ接合部分のデザインが前作(写真下)から進化しフレーム剛性の向上に寄与している

シートポストの固定位置の変更
シートポストを固定するシートピンの差込口がトップチューブ上面へと移動。前作はシートチューブ下部にあったのだが、これによりメンテナンス性が向上している。

シートを固定するボルトがフレーム上面へと移され調整がしやすくなった

ヘッドチューブのさらなるエアロ化
新型モデルのヘッドチューブは前面を見るとさらに絞られた(細くなった)形状で、横面は大型に(面積が増えた)。ここでもエアロと剛性の向上を突き詰めている

マチューは30mmのタイヤを常用
近年のロードレース界では、タイヤ幅の拡大がとどまるところを知らないくらいの傾向にあるが、マチューは30mmのタイヤ幅サイズを好んで使用(写真下)。
新型CFRのタイヤクリアランスの大きさは前モデルから引き継がれている。

以上までのマチューの最速モデルのポイントを押さえておくと、新型CFRのプレミア度はさらに高まることだろう。

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>> 特集/トライアスリートのためのツール・ド・フランス リポート

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