アイアンマンディスタンスで男子6時間台、女子7時間台のタイムが生まれるか? 空前絶後のトライアルレースが6月にドイツで開催

『フルディスタンス(スイム3.8km、バイク180.2km、ラン42.2km)のレースで、男子7時間切り、女子は8時間を切るタイムを目指す』
昨年のプロジェクト発表時から、各国のトライアスロン・メデイアに注目されてきたトライアルレース “PHO3NIX(フェニックス)・サブ7&サブ8プロジェクト” の開催概要が主催から発表された。

メイン会場となるのはドイツ北東部、ポーランドとチェコの国境近くに位置する都市、ドレスデン郊外にある DEKRA ラウシツリンク・サーキット。ドイツ・ツーリングカー選手権、スーパーバイク世界選手権など多くの国際大会が実施されている有名なレーシング・コンプレックスだ。
開催日は6月5日、6日の2日間で設定。6月5日実施を予定してはいるが当日の天候などを考慮し、ベストな状態でレースに臨めるようフレキシブルにスタート日時を調整できるようにした。まさに1分1秒を削り出すレースに向け、最善のコンディションを目指すスケジューリングとなる。

バイク&ランのメインコースはフラット&楕円形の高速サーキットが舞台となる

出場する選手はもちろん、このイベントにノミネートされているアリスター・ブラウンリー(イギリス)とクリスティアン・ブルンメンフェルト(ノルウェー)、そしてルーシー・チャールズ-バークレー(イギリス)とニコラ・スピリグ(スイス)だ。この4人が、特別に設定された男女それぞれのマッチレース形式のタイムトライアルを走り、全人未踏の記録に挑む。

「北米、オーストラリアをはじめ世界のあらゆる候補地を洗い出し、ベストなロケーションを選定しました」と、レースプロデュサーのクリス・マコーマック。タイムゾーン、気候、高度、路面、全体レイアウトなど、さまざまな要素を勘案し、史上最速のコースが設計できたという。

スイム会場はラウシツリンク・サーキットから約5km離れたゼンフテンベルガー湖。
この1,300ヘクタールを有する人工湖でポイント・トゥ・ポイント、つまりターンの必要がない3.8kmのほぼ直線となるスイムコースを設定。男子の場合、7時間を切るためのスイムタイムの目安を45分とし、100m71秒平均のペースメイクをしやすくしている。

スイムアップ後、バイクをピックアップした選手たちは湖からの強い追い風(卓越風)を受け、街中を走る高速道路をを経て、ラウシツリンクの1周5.85 kmのオーバル・サーキットに舞台を移す。
そこでのバイクパートでは、男子では時速45〜50km平均のペースが目安となり、さらにその後のランで1km4分を切るスピードで押し切る走力が必要となる。

それを可能とするのが、最大10人のペースメーカーを利用することができるという、レース主催者が定めた特別なルールだ。このサブ7&サブ8プロジェクトのレースに挑戦する選手たちは、スイム、バイク、ランのそれぞれに、自ら選んだペーサーを配することが許されている。
たとえばスイムで競泳選手にペースメイクしてもらい、バイクではプロサイクリストとローテーションを組んで走行するといった具合だ。つまりバイクはドラフティングOKで、ツール・ド・フランスのチームタイムトライアルのようなレース形態が予想される。
このルールに沿って、クリスティアン・ブルンメンフェルト(写真上)はペーサーの一人に、同じノルウェー選手のグスタフ・イデン(2021アイアンマン70.3世界チャンピオン)を指名しているという。

また、ルーシー・チャールズ-バークレー(写真上)は、「現時点での(アイアンマンディスタンスの)最高記録8時間18分13秒をマークした、同じ英国アスリートのクリッシー・ウェリントンを最大限リスペクトしています。そして私はこの偉大な記録を大きく打ち破るために、イギリス人だけの女性チームで臨みたいと思っています。事前のレース戦略の打ち合わせもしやすくなりますしね」と、すでにレースプランを組み立て始めている。
その出場アスリートたちが選出する最大10人のチーム員は2月末に発表されるとのことなので、そちらにも注目したい。

いずれにせよ、出場者4人すべてが重要なポイントと見るのは最も競技時間が長いバークパートだ。
「ラウシツリンクのオーバルコースはスピード重視の設計のため、記録を打ち立てるのには最適なロケーションでしょう。バイクエキップメント、フォーム、補給などすべての要素を精査し、結果を最大化、そしてリスクを最小化するための環境を作り上げる作業が不可欠となりますね」とアリスター・ブラウンリー(写真上)。
ロングディスタンス史上最速を目指すレースは、これまで考えられなかったような新たなイノベーションを生みだすかもしれない。

当然のことながら、今回の特別なレースルールにより、フィニッシュタイムは公認の記録としては扱われない。しかし主催者はこのイベントが、タイムのみならずトライアスロンをさらなるメジャースポーツとしての注目や報道をもたらし、アスリートの進化に寄与する科学的データの蓄積などにもフォーカスしているという。
クリスティアン・ブルメンフェルトも、「最適な気象条件と高速&フラットなコースの組み合わせ。そして技術の粋を集め歴史に残る記録に挑むレースは、私たちの進化に大きく意義を残すでしょう」と期待を寄せている。

一方でロンドン・オリンピック金、リオでは銀メダルを獲得しているニコラ・スピリグ(写真上)が2月初旬、バイク練習時のアクシデントで肋骨と鎖骨を骨折し、6週間トレーニングできない状態なのが少し気がかり。しかし今回のレース概要の発表後にも、前向きな姿勢を示しているので引き続き期待しよう。

そしてもう1点、今回の フェニックス・サブ7&サブ8プロジェクト の1カ月前にアメリカ・ユタ州セントジョージでアイアンマン世界選手権が開催されことにも注目が集まっている。
早くからこの5月のレースへの参戦も表明し、シーズン最大のターゲットのひとつとしているルーシー・チャールズ-バークレーは、「(ドイツの)ラウシツリンク・サーキットに向けての成功は、5月のセントジョージ後のコンディショニングが大きなカギを握っていますね。私たちのチームは、トレーナー、科学的アドバイザー、スポンサーなどすべてのリソースを活用し、これまでと同じく準備していきます。そして、アイアンマン世界選手権で勝利を納められれば、そのレース経験が6月のフェニックス・プロジェクトのレース戦術、具体的にはペースメーカーの配置法やエキップメントの選択などにプラスに働くと確信しています。非常にエィサイティングなシーズンとなるでしょう」と先を見据えている。

果たして今年の6月5日、トライアスロンの歴史に新たな1ページが加えられるだろうか。そのときを待とう。

>> フェニックス・サブ7&サブ8プロジェクトのHP ※タップ

【レース会場紹介動画】

関連記事一覧

過去の記事ランキング

  1. 1

    トライアスリートのためのツール・ド・フランス特集2020 速攻TTバイクリポート

  2. 2

    国内大会からまたハワイへの道が開かれる日が!2023年日本でアイアンマン開催実現に期待しよう!

  3. 3

    フェルトの新型トライアスロンバイク 2022年の注目モデルをチェック

  4. 4

    世界のアイアンマン・2021シーズンの今

  5. 5

    九十九里トライアスロン2021【動画リポート】

  6. 6

    最速TTバイク/五輪を制した “サーヴェロ・P5” を検証する

  7. 7

    ブルンメンフェルトの強さ&速さの秘密とは?【前篇】/宮塚英也のトライアスロン“EYE” 〜トライアスロン・トレーニングの鉄則〜

  8. 8

    クリスティアン・ブルンメンフェルト アイアンマン・7時間21分12秒の衝撃 / 世界記録を更新

  9. 9

    ブルンメンフェルトが利用する最先端ウエアラブル・センサー “CORE” 次世代トレーニング・アイテムに注目

  10. 10

    ツール・ド・フランス2021特集 注目の新興TTバイク① KTM/TEAM TT

おすすめ記事 過去の記事
  1. トライアスリートのためのTDF【TTバイク編②】 ヴィンゲゴー VS ポガチャル / 雌雄を決する高次元のファストTTバイク

  2. フェルトの新型トライアスロンバイク 2022年の注目モデルをチェック

  3. トライアスリートのためのTDF【TTバイク・番外編】スタート前のレースパドックをチェック

  4. コリンズ・カップは世界トッププロたちの重要ターゲットになり得たか

  5. ツール・ド・フランス2021特集 トライアスリートはログリッチの足まわりに注目せよ <サーヴェロ/S5 Disc>

  6. ツール・ド・フランス2021特集 TTバイク速攻リポート

  7. トライアスリートのためのTDF【TTバイク編③】 ジャイアント・TRINITY ADVANCED PRO TT / ブルンメンフェルトがアイアンマンレコードを叩き出したファストバイク

  8. ブルンメンフェルトの強さ&速さの秘密とは?【後編】/宮塚英也のトライアスロン“EYE”  〜クリスティアンのトレーニグ改革〜

  9. 最速TTバイク/五輪を制した “サーヴェロ・P5” を検証する

  10. 水郷潮来トライアスロン2020【動画リポート】

  1. 2023年のアイアンマン・ハワイも2日開催に。シリーズ全17大会で女性スロットを拡充

  2. 東京五輪のコロナ対策でフォーカスすべき “Bubble (バブル)” とは?

  3. ツール・ド・フランス2021特集 レースを支える応援者は“もうひとりの主役”

  4. 躍進するシマノ。今年のツール・ド・フランスにも注目

  5. グスタフ・イデンとアシュリー・ジェントルがツアー開幕戦を勝利 / PTOカナディアン・オープンが開催

  6. 【動画】チーム&クラブ訪問/Team BRAVE 編(兵庫)

  7. トライアスリートのためのツール・ド・フランス特集2020 エアロロードという選択肢

  8. 賞金総額1億3,500万円! PTOカナディアン・オープンがいよいよ開催

  9. コリンズ・カップはトライアスロンの新たな歴史を刻んだか?

  10. ツール・ド・フランス2021に見る東京五輪を走るバイク② 〜ドリアン・コニン編〜

TOP