昨年に続きスロバキアの西部・シャモリンで2回目の開催となったコリンズ・カップ。
今回このレースを追ったのには訳がある。それは世界のトッププロたちの流れが、このレースの登場により確実に変わりつつあるからだ。
実際のレースでは、ショート〜ロングを問わず今注目を浴びている有力選手や実績のあるベテランなど、その動向が話題になるアスリートたちがエントリー。
必然的にトライアスロンメディアの取り上げ回数も増え、出場する選手たちはSNSを中心にイベント前の近況やレースの感想などを発信。それらがまた(注目度の)波及効果を生むこととなる。
そんな世界のトッププロたちが集まる要因は、大きくふたつが考えられる。
ひとつはスイム2km、バイク80km、ラン18kmというミドルディスタンスのレースフォーマット。そしてもうひとつが賞金だ。
今回、出場男子全体の中でトップタイムをマークしたクリスティアン・ブルンメンエルト(ノルウェー/写真上)はこの大会ついて、
「世界から選りすぐられたアスリートたちが競い合うことは非常に意味のあることだと思う。一般的にはショートディスタンスがメイン、あるいはロングをメインに活動している選手たちは、それぞれの得意なフィールドを中心に戦っているわけで、それがこのコリンズ・カップではクロスオーバーする。競技自体の発展にも大きく寄与すると感じるね。選手が獲得できる賞金もスゴイといえるだろうし」と見立てている。
奇しくも、このレースを主催する機関、Professional Triathletes Organization(PTO)のCEO、サム・レノーフ氏は、「私たちPTOの使命は非常にシンプルです。それはトライアスロンというスポーツのさらなる発展とメジャー化に寄与すること。それによりトライアスロン・コミュニティの価値をより向上させ、プロだけでなくトライアスロンに参加するすべての人々に刺激を与え続けることです」と、この大会のオープニングセレモニーで熱く語っている。
今回、女性出場者の中で最も注目を集めていたひとりのダニエラ・リフ(スイス/写真上)はレース後、こうコメントしてくれた。「この会場にいること(レースに出場すること)が嬉しいですね。チームのため、そしてチームスタッフのためにレースするのは特別なこと。素晴らしいフィーリングです。レースフォーマットも上手くできているといえるでしょう」
先のブルメンフェルトが指していた賞金については、彼の同胞でもあるグスタフ・イデン(ノルウェー/写真下)がこれまでPTO主催のレースで獲得した総額をみると分かりやすい。
一昨年末のPTOチャンピオンシップで10万ドル(1位)、昨年のコリンズ・カップで8万ドル(2位)、2021年のPTO年間ランキング賞金で10万ドル(1位)、そして今年7月に新しく開催されたPTOカナディアン・オープンで10万ドル(1位)と、なんと合計で38万ドル(5,200万円)を数えているのだ。
これは、プロならば注目しない訳ないだろう。
開催レースのフォーマットは昨年同様ユニークなもの。具体的には、各国から選出されたた男女36人の選手が、欧州圏のアスリートで構成されるチーム・ユーロ、アメリカ選出のチームUS、そしてそれ以外の国のメンバーからなるチーム・インターナショナルの3チームに分かれて争う団体戦。
各チームから1名ずつを選出し、3人だけのマッチレースを12戦実施。各レースの順位(1〜3位)とタイム差に応じてポイントを換算し、全12マッチのトータルで最多のポイントを獲得したチームが優勝するという内容だ。
8月20日、午後1時からスタートしたイベントは、各マッチレースがそれぞれ10分おきにスタートし、テンポよく進んでいく。
テレビを含めた映像配信は世界160カ国を数えたという
TV放送は各マッチの進捗を同時進行で追い、その時点での選手の獲得ポイントやチーム順位などをライブで表示し、ゲーム性の高さも演出。
さらには、素早く編集された映像が、同じ選手のレース中に差し込まれるなど、見る側を飽きさせない進行も昨年同様。むしろグレードアップした感があった。
ちなみに、ユーロスポーツなどを中心としたこのレースの映像配信は世界160カ国。それだけでも今回のコリンズ・カップの規模が分かろうというものだ。
その注目イベントの今回の結果は、昨年に引き続きチーム・ユーロがチーム・インターナショナル(2位)、チームUS(3位)に大差をつけて優勝。
チームメンバーが優勝シンボルのコリンズCUPを掲げ、2022年大会の幕を下ろすこととなった。
さて、このコラムタイトルに戻ろう。今回2回目の開催となるコリンズ・カップ。トライアスロン界の新しい基軸になるとも目されていたこのレースは、世界のトッププロたちの重要なターゲットになり得たのか?
答えはイエスだ。破格といえる賞金総額、PTOランキングによりメンバー選出されるというステータス、そしてチーム対抗の要素を盛り込んだ唯一無二のレースフォーマットなど。
1度目(昨年)のレースは初めてだけに手探りな部分もあったかも知れないが、少なくとも今年については、レース全体の完成度の高さが感じられたし、何よりも出場選手たちの表情、リアクションが個人のレースとはまた違ったものといえた。
これらは、世界のトッププロなら必ずチェックしているはず。出場できる、あるいは出場を目指す選手は自身のメインフィールド、ショートなら51.5km大会などとあわせて、ロングならアイアンマンやミドル大会に加え、このコリンズ・カップ(PTOイベント)を意識した年間スケジュールを組むことになるだろう。
最後に、このレース期間中に、大会を主催するPTOのサム・レノーフCEOはじめ数人のスタッフから、「近い将来、日本からもぜひ選手が出場してくれる日が来るのを心待ちにしてますよ」と声をかけられた。
コリンズ・カップ出場の日本人第一号は誰なのか。期待をして待ちたい。
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