ツール・ド・フランス2021特集 トライアスリートはログリッチの足まわりに注目せよ <サーヴェロ/S5 Disc>

TDF for Triathlete

第3ステージを走るログリッチ(右) ©A.S.O._Pauline_Ballet

 昨年個人総合2位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を擁するユンボ・ヴィズマは今シーズンからからバイクをビアンキからサーヴェロへとスイッチしている。
 トライアスリートにとってサーヴェロは馴染みのメーカーといえるが、P5といったトライアスロン&TTバイクをイメージする人が多いだろう。しかし、エアロロードバイクのS5にも注目しておきたい。その理由は数あるロードモデルの中にあって、空気抵抗削減のためのデザインが突出しているところ。ロードレースでは主に平坦ステージで投入されており、それは直進走行性能の高さを示す表れといえる。
 デザインの特徴はシートチューブが後輪タイヤの輪郭に沿ってシェイプされているだけでなく、大胆な扁平形状の大型ダウンチューブも同様の形状に加工され、タイヤの回転よる空気の巻き込みをできるだけ削減。さらにはバイク前面で受ける空気抵抗を下げるため、Y字型デザインのステムを採用した専用バンドルと、ヘッドまわりをカバーするユニークな形状のフロントフォークを生み出した(写真下左)。そしてすべてのケーブル類をフレームに内装化するなど徹底的に空力性能を高めている。つまりはロードバイクの規格で収まりながら、P5のコンセプト、流れを踏襲したモデルともいえるだろう。 

 コンポーネンツはシマノ・デュラエースがメインで基本的にはオーソドックスなスタイルといえる。
 特に目につく点といえば足回り。ログリッチはこれまでのR5の純正ともいえるデュラエースのホイールではなく、リザーブ製のカーボンエアロホイールを使用しているところだ。
 リザーブはもともとはMTBホイールで有名なブランド。ラフなコースで高く評価された剛性テクノロジーを、サーヴェロのサポートのもとブラッシュアップして高い空力性能と剛性を兼ね備えたロードホイールも展開するようになった。そのラインアップを見てみると、リム高が35mm、40&44mmの前後セット、50mm、60mmの4種類があり、主に50mm、60mmがトライアスロンも意識したモデルとなっている。今後、注目しておくべきメーカーだ。

トライアスリートにも人気が出そうなリザーブのホイール

 このホイールは、ツールでは以前チーム・サンウェブ(当時)が使用するサーヴェロのバイクに2020年から一部セットされていた(メイン使用は同じくシマノのホイール)。ユンボ・ヴィズマでもステージの特性や個人の走りにあわせて同じ組み合わせ(リザーブかシマノ)を踏襲しているが、サンウェブ時代と比べるとよりリザーブを使う選手率が増えている点も注目したい。

 ちなみに昨年ユンボ・ヴィズマが使用していたビアンキのバイクはチームの方針などでリムブレーキだったが、今年はサーヴェロに変わり必然といったかたちでディスクになっている。
 今回ログリッチが主に使っているのはリム高50mmのモデル。使用するタイヤの幅は最近の傾向に沿った太い26mmだ。トライアスロンでもそうだったが、昔はタイア幅は細ければ細いほうが抵抗を削減できて速く走るために向いているとされていた(その分乗り心地は固くなる)。しかし実はそうでなく、ある程度幅があったほうが転がり抵抗が低く抑えられることが分かり、かつ乗り心地も良くなるので今やロードレースの定番となっている。

 今回はエアロロードモデルにフォーカスしたが今後レースが進み山岳ステージが始まると、より軽量な純ロードモデルといえるR5が投入されるだろう。
 ちなみに、ログリッチなどのスペアバイクのタイヤに青いカラーのモデルが装着(写真上右)されていたので、メカニックに聞いてみると「性能は(黒モデルと)まったく同じだよ。片輪の色が違っているのってオシャレだろ」とのこと。
 バイクのアッセンブルにも洒落っ気を感じさせるところは欧州プロサイクリングチームならではだ。

>> 最速TT&トライアスロンバイク/五輪を制した “サーヴェロ・P5” を検証する

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