レースシーズンも終盤を迎えるニュージランドのイベントで採用されている、ドラフティング管理&運用のため開発された電子センサー・システムが注目を集めている。
レース・レンジャー(Race Ranger)という1個100g弱の丸型デバイスで、写真下のようにバイクの前後(フロントフォークやシートポストなど)に設置。バイク走行時のドラフティング判定のセンサーとして利用するというもの。
フロントフォークに取り付けられたデバイスは、周囲のほかのデバイスとの距離を感知するセンサーとして。そしてリアのデバイスはセンサー機能とともに後方のライダーへ、青と赤ランプの点滅(視認)サインを発して車間距離を伝える役割を果たす。
センサー同士の距離判別の範囲は30m〜10cmまでで、1 秒間に10回の頻度でそれぞれが信号を発信。これによりリアルタイムでの車間距離を感知し、リア・デバイスのライトの点滅設定によって後ろのライダーに知らせることが可能となる。
たとえばライダーが前方バイクの15m後ろに近づくと、赤色のライトがゆっくりと点滅。これはドラフトゾーンに迫っていることを示す。
そして12m以内のドラフトゾーンに入ると青色ライト点滅とともに赤色のフラッシュが早くなり、エリアから離脱(追い越しか、後方に下がる)する必要性を後方ライダーに伝達。これらのサインにより、ドラフトゾーンの滞在期間を管理する役割を果たす。
さらに、このデータをタブレット端末などに発信することで、移動マーシャルやペナルティ・ボックスの担当者たちと共有することが可能。選手がどれくらいの時間ドラフトゾーンに滞在していたかなどを分析ができ、バイク前部(フロントフォークなど)に装着したデバイスを介してペナルティ信号を伝達するなど、オフィシャル運営のシステム化を目指したデバイスとなっている。
また将来的にはGPS機能と連動させることで、選手の位置情報を使っての応援に活用できる可能性もあるとメーカーは発表している。
このデバイスがメジャーレースで一部導入され、話題になったのが今年1月21日にニュージーランド北島で行われたタウランガ・ハーフトライアスロン、そして2月18日に同国の南部で実施のチャレンジ・ワナカ(ミドルディスタンス)だった。
ワカナのレースではドイツのセバスチャン・キーンレ(写真上)も出場し、「(レース・レンジャーの)システムには好感がもてたよ。ドラフティングを気にすることなくレースにも集中できるしね」などとと評している。
ニュージーランド発祥のメーカーもあって、まずは自国レースから導入に取り組んでいる状況のようで、先日のアイアンマン・ニューニーランドのプロカテゴリーなどにも使用されていた。
一方、これらに先駆けて同デバイスが注目を浴びていたのは実は1年以上前のこと。ワールドトライアスロンとレース・レンジャーが提携し、ノンドラフティングレースへの本格導入を目指すと発表されていたことに端を発している。
>> WORLD TRIATHLON のニュースリリース(2021/11/10)※英文
ドラフティング・ルールが可視化できればレースの公平性はより担保しやすくなるだろう。現在はプロカテゴリーなどトップのレース導入からスタートしているようだが、この Rance Ranger のテクノロジーが今後、どのように広がっていくのか否か。そう遠くない将来、世界スタンダードになっているのかもしれない。
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