アイアンマン70.3世界選手権2025 がスペイン・マルベーリャで11月8日・9日(日本時間)に開催 〜 有力プロ選手紹介&レース展望 〜

IM 世界選手権

2006年の11月にアメリカ・フロリダ州クリアウォーター(Clearwater, Florida)で第1回大会が開催されたアイアンマン70.3世界選手権。
今年はスペイン南部、ジブラルタル海峡を望むリゾート地・マルベーリャ(Marbella)に、114の国・地域から6,300名超のアスリートが集う。
とりわけプロカテゴリーにはこれまでにないほどの豪華な顔ぶれがそろい、20年の節目を迎えるチャンピオンシップは、史上最もレベルの高いレースとなるだろう。
その男女注目選手たちをピックアップする。(出場全リストは最後に掲載)

⬇️ ライブストリーミング視聴はこちら:
YouTube(IRONMAN公式)配信リンク

【女子プロ】11月8日(土)・15時50分スタート ※日本時刻

10月のアイアンマン世界選手権コナの興奮冷めやらぬ中、その主役を演じたアスリートたちがアンダルシアの地で再び激突。
レースは(10月から)距離が半分になったものの、バイクの獲得標高は1,785mとタフなレイアウト。ランは海岸沿いのフラット基調だけに、スイムの飛び出しからバイクフィニッシュまでが体勢を大きく左右する展開となるだろう。

.

テイラー・ニブ(🇺🇸アメリカ)

レースの中心となるのはやはり彼女。
70.3世界選手権史上初となる4連覇。2022年のアメリカ・セントジョージ23年フィンランド・ラハティ、24年ニュージーランド・タウポに続くタイトル奪取を目指す。

昨年12月のタウポでも圧勝劇を演じたニブ。70.3レースではその存在感がひときわ引き立つ © Fiona Goodall/Getty Images for IRONMAN

懸念材料としては、先月ハワイ(アイアンマン世界選手権)でのまさかのリタイアからの回復状態だろう。
歓喜のトップフィニッシュを目前にしながら、長丁場のレース&暑熱による負担からラン終盤で突然の失速。残り3.5kmでレースから姿を消した衝撃は記憶に新しいのではないか。
その一方で、ニブのこれまでのアイアンマン70.3大会の出場通算成績は8戦6勝(世界選手権含む)。
オリンピアンとしてのスピードはミドルディスタンスでも決め手となる武器に、そしてバイクの走力が(マルベーリャの)レース適性に大きく寄与するのは間違いなく、やはり優勝候補の筆頭といえる。
「正直、(コナでのことは)ほとんど覚えていませんが、ここに来られたことに感謝しています。先週の火曜日に(医療チームとコーチから)出場OKが出て、金曜夜にスペイン行きのフライトを取りました。まさに直前の決断です」(ニブ)
とにかく(ハワイからの)直近4週間にわたるコンディショニングがカギを握ることになるだろう。

.

ルーシー・チャールズ = バークレー(🇬🇧イギリス)

ニブと並んでレースの中心となるであろうチャールズ = バークレー。
10月のアイアンマン世界選手権同様、スイムスタートから飛び出す公算が大きく、今回(レース)前半の主役を担うのは間違いない。
2021年のセントジョージ大会 で70.3ワールドチャンピオンの初タイトルをつかんでいるが、そのときの展開も先行逃げ切り。この必勝プランの完遂を目指す。

10月のハワイでは好調をアピール。今回のレースもスタートから飛び出して主導権を握ることだろう © Donald Miralle for IRONMAN

結果を左右するのはこちらもニブと同じく本番に向けてのコンディショニング。
10月のハワイでも序盤から飛び出して快走を見せつつも、ランの中間点で失速&リタイアしており、そこからのリカバーに注目が集まる。
一方で、「今年はこのスペインの地で2勝していて(アイアンマン・ランサローテとT100 スペイン大会)、とても良いエネルギーを感じています」と調子は上向きのよう。
実はチャールズ = バークレーとテイラー・ニブのコーチは同じ(ダン・ローラン氏/ツール・ド・フランス出場チームのコーチングディレクターとしても活躍)で、その指導手腕が結果を左右することになるのかもしれない。(※チャールズ = バークレーについては、ローラン氏はプログラム責任者的な立場となる)

.

ソルヴェイ・ルーセト(🇳🇴ノルウェー)

先月開催された アイアンマン世界選手権コナ を大逆転劇で制し、時の人となったルーセト。今年からロングに挑戦し、アイアンマン3戦目にしての快挙は多くの人を驚かせた。
昨年までは51.5kmをメインに活動し、2024年パリ五輪の母国代表でもある彼女にとって、ミドルディスタンスはアイアンマンよりも適性度が高いはず。よって今回、一気に優勝候補の一角に挙げられている。

今回でアイアンマン、アイアンマン70.3チャンピオンのダブルタイトル獲得なるか? © Ezra Shaw/Getty Images for IRONMAN

「今年は本当に良い年でしたし、このレースに向けて特にプレッシャーは感じていません。コナの後、再びこうしてレースできることがただうれしいです」と、ビッグタイトル獲得後も気負うことなくマイペースでリカバー。そしてマルベーリャに向けて調整してきているようで、やはり目の離せない存在に。
持っているスピードはトップレベルであるのは間違いないので、本人が組み立てたプラン次第では、序盤からルーシー・チャールズ = バークレーを上回るパフォーマンスを見せても何ら不思議はない。
ハワイではトップのバイクラップ(4時間31分53秒)をたたき出している点も、ライバルたちにとっては脅威に映っていることだろう。

.

カット・マシューズ(🇬🇧イギリス)

昨年からスタートした アイアンマン・プロシーリズ の2024年間ランキング 1位。2025年シリーズも現在1位をキープしていてシーズン連覇をこのレースで決めたいマシューズ。
前回の70.3世界選手権・タウポ大会(写真下)では、テイラー・ニブに続く2位に入っており、ミドル〜フルディスタンスで抜群の安定力を有しているアスリートといえる。

ただ前述の3人に対しては、後半のラン勝負に展開を持ち込むしかなく、距離の短い70.3では勝負所を早めに作る必要がありそうだ。
一方で10月のハワイのランでたたき出したラップは2時間47分23秒(トップ)。そのパフォーマンスを上回る走りを今回、バイク後に披露できれば悲願の世界タイトル獲得もあるかもしれない。

.

【男子プロ】11月9日(日)・15時50分スタート ※日本時刻

翌日行われる男子プロ・レースの注目は何と言っても “ノーウィージャン・トリオ” のパフォーマンス。
9月にフランス・ニースで行われた男子アイアンマン世界選手権の表彰台を独占したノルウェー選手たち、カスパー・ストルネス(優勝)、グスタフ・イデン(2位)、クリスティアン・ブルンメンフェルト(3位)の走りだろう。
それをディフェンディングチャンピオンたちがどう迎え撃つか? ここが大きな焦点となる。

イエレ・ヒーンス(🇧🇪ベルギー)

2024年のアイアンマン70.3世界王者(ニュージーランド・タウポ/写真下)で、今年はプロシリーズ開幕戦となる70.3ジーロング大会を3時間33分24秒で優勝。
T100 トライアスロン・ワールドツアーでは5月のサンフランシスコ大会 2位、6月のバンクーバー大会優勝などミドルディスタンスで図抜けた適性を現在見せ始めている。

「昨年のタウポ前はヨーロッパからオーストラリアへ引っ越したばかりで慌ただしかったのですが、今は落ち着いています。今回は初めて高地合宿を取り入れて準備きたので結果が楽しみです。出場者の中ではショートディスタンス勢にも注目が必要。当日アッと驚かせる選手もいると思いますよ」
これまで彼はは51.5kmを主戦場とし、WTCS横浜大会出場のため来日したこともある、2024年パリ五輪代表のオリンピアン。
スイムからスムースな出だしを得意としながら、後半の粘りも大きな武器としており事実、昨年のタウポでもランで逆転して勝利している(ランラップ・トップをマーク)。
今回も終盤勝負に持ち込み連覇を果たすことができるか?

.

リコ・ボーゲン (🇩🇪ドイツ)

2023年の70.3世界チャンピオン(フィンランド・ラハティ)。22歳の最年少優勝という衝撃で頭角を現し、以降もミドルを中心に存在感を示してきた。

一昨年からは T100シリーズを中心に活躍し、現在はPTOワールドランキング 5位。
バイクでの高出力ライドとトランジションの早さが大きな武器となっている。スイムで先頭グループに残り、バイクで主導権を確保できればランで粘る勝ち筋が見えてくるだろう。

.

クリスティアン・ブルンメンフェルト(🇳🇴ノルウェー)

東京オリンピック金メダリストにして、アイアンマンでも数多の実績を残し続けていることは周知のとおり。
2022年はアイアンマン、そしてアイアンマン70.3の世界選手権ダブルタイトルを獲得している(いずれもアメリカ・セントジョージ大会)。
今年9月のアイアンマン世界選手権ニースでは、彼のトレードマークであるカデックスTRIで起伏の激しいバイクコースを走破しており、今回も大本命のひとりとなる。

「今週末のタイトルももちろん狙いますが、実はモチベーションは来年のハワイにあります。今回カスパーを倒すのは難しいかもしれませんが、グスタフには勝てるはずです!」

.

グスタフ・イデン(🇳🇴ノルウェー)

アイアンマン世界選手権のタイトルはフルディスタンスでは2022年のハワイ、そして2019年の70.3ニースと2021年の70.3セントジョージで獲得。アイアンマン70.3ではコロナ禍で2020年大会が実施されていなかったので、連覇ということになった。
ここ2年はなかなか思うような結果を残せていなかったようだが、今シーズンはアイアンマン・フランクフルトで4位、そしてニース世界選手権では2位とついに調子を取り戻し、再びのタイトル奪取を目指す。

「今シーズンずっと上向きの軌道に乗っていて、ニースは完璧な復帰戦と言えました。ただあの男(ストロネス)がいたことで少し計画が狂ったたけれども(笑)」

.

カスパー・ストロネス(🇳🇴ノルウェー)

ブルンメンフェルトの3つ年下。ショートディスタンスではU23時代から活躍し続け、2018年のWTCSバミューダ大会ではブルンメンフェルト、イデンの3人で表彰台を独占(1位:ストロネス)。ノルウェー旋風を巻き起こし注目を集めた。
以降、アイアンマン70.3なども含め幅広いレースをカバー&実績を残し、昨年もWTCS横浜大会に出場している(37位)。

フルディスタンスのアイアンマンは、今年から本格的にチャレンジして6月末のフランクフルト大会で3位に。
そして9月のニース大会で奇しくも2018年と同じくノーウィージャンの表彰台独占。しかもアイアンマン世界選手権で、という快挙を成し得ることとなった。
「ここで勝つにはランで1時間6分のタイムが必要だと思うけど、バイクコースが脚に大きく影響するので、賢く走らなければいけませんね。背中に大きな重圧を感じますが、外からのプレッシャーではなく、自分に課すプレッシャーです。今季最後のレース。しっかり結果を残したいですね」
今まで以上に注目を浴びる今レースで結果を残せれば2026年シーズン、ブルンメンフェルト、イデンを押しのけての主役に躍り出ることになるだろう。

▶︎▶︎ 女子レース・リポートはこちらから ※リンク

【女子プロ出場者リスト】11月8日(土)・15時50分スタート

【男子プロ出場者リスト】11月9日(日)・15時50分スタート

関連記事一覧

おすすめ記事

過去の記事ランキング

  1. 1

    アイアンマン ジャパン みなみ北海道。2024年9月15日(日)開催を目指し実行委員会が立ち上がる / 日本にフルディスタンスのアイアンマンが帰ってくる!

  2. 2

    クリスティアン・ブルンメンフェルト アイアンマン・7時間21分12秒の衝撃 / 世界記録を更新

  3. 3

    ブルンメンフェルトの強さ&速さの秘密とは?【前篇】/宮塚英也のトライアスロン“EYE” 〜トライアスロン・トレーニングの鉄則〜

  4. 4

    最速TTバイク/五輪を制した “サーヴェロ・P5” を検証する

  5. 5

    2025年アイアンマン世界選手権ニースは 9月14日、ハワイは10月11日に開催。 来月にはアイアンマン・プロシリーズの最終戦が実施される

  6. 6

    2023年のアイアンマン・ハワイも2日開催に。シリーズ全17大会で女性スロットを拡充

  7. 7

    トライアスリートのためのツール・ド・フランス特集2020 速攻TTバイクリポート

  8. 8

    フェルトの新型トライアスロンバイク 2022年の注目モデルをチェック

  9. 9

    ブルンメンフェルトの強さ&速さの秘密とは?【後編】/宮塚英也のトライアスロン“EYE”  〜クリスティアンのトレーニグ改革〜

  10. 10

    アイアンマン ジャパン みなみ北海道 の2024年9月15日開催が正式にアナウンス / エントリーは12月19日の午前9時よりスタート!

おすすめ記事
過去の記事
  1. ツール・ド・フランス2021特集 TTバイク速攻リポート

  2. 《Hawaii 特集》アイアンマン・ハワイ / プロ選手レース記者会見【動画レポート】

  3. ブルンメンフェルトがアイアンマン70.3世界選手権に出場 / ノーウィージェン・デュオの熱戦再び

  1. 【動画】チーム&クラブ訪問/Team BRAVE 編(兵庫)

  2. 2023年のアイアンマン・ハワイも2日開催に。シリーズ全17大会で女性スロットを拡充

  3. トライアスリートのためのツール・ド・フランス特集2020 ブレーキシステムのトレンドを追う

TOP
CLOSE