2006年の11月にアメリカ・フロリダ州クリアウォーター(Clearwater, Florida)で第1回大会が開催されたアイアンマン70.3世界選手権。
今年はスペイン南部、ジブラルタル海峡を望むリゾート地・マルベーリャ(Marbella)に、114の国・地域から6,300名超のアスリートが集う。
とりわけプロカテゴリーにはこれまでにないほどの豪華な顔ぶれがそろい、20年の節目を迎えるチャンピオンシップは、史上最もレベルの高いレースとなるだろう。
その男女注目選手たちをピックアップする。(出場全リストは最後に掲載)
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【女子プロ】11月8日(土)・15時50分スタート ※日本時刻
10月のアイアンマン世界選手権コナの興奮冷めやらぬ中、その主役を演じたアスリートたちがアンダルシアの地で再び激突。
レースは(10月から)距離が半分になったものの、バイクの獲得標高は1,785mとタフなレイアウト。ランは海岸沿いのフラット基調だけに、スイムの飛び出しからバイクフィニッシュまでが体勢を大きく左右する展開となるだろう。
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テイラー・ニブ(🇺🇸アメリカ)
レースの中心となるのはやはり彼女。
70.3世界選手権史上初となる4連覇。2022年のアメリカ・セントジョージ、23年フィンランド・ラハティ、24年ニュージーランド・タウポに続くタイトル奪取を目指す。

昨年12月のタウポでも圧勝劇を演じたニブ。70.3レースではその存在感がひときわ引き立つ © Fiona Goodall/Getty Images for IRONMAN
懸念材料としては、先月ハワイ(アイアンマン世界選手権)でのまさかのリタイアからの回復状態だろう。
歓喜のトップフィニッシュを目前にしながら、長丁場のレース&暑熱による負担からランで失速。残り3.5kmでレースから姿を消した衝撃は記憶に新しいのではないか。
その一方で、ニブのこれまでのアイアンマン70.3大会の出場通算成績は8戦6勝(世界選手権含む)。
オリンピアンとしてのスピードはミドルディスタンスでも決め手となる武器に、そしてバイクの走力が(マルベーリャの)レース適性に大きく寄与するのは間違いなく、やはり優勝候補の筆頭といえる。
とにかく(ハワイからの)直近4週間にわたるコンディショニングがカギを握ることになるだろう。
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ルーシー・チャールズ = バークレー(🇬🇧イギリス)
ニブと並んでレースの中心となるであろうチャールズ = バークレー。
10月のアイアンマン世界選手権同様、スイムスタートから飛び出す公算が大きく、今回(レース)前半の主役を担うのは間違いない。
2021年のセントジョージ大会 で70.3ワールドチャンピオンの初タイトルをつかんでいるが、そのときの展開も先行逃げ切り。この必勝プランの完遂を目指す。

10月のハワイでは好調をアピール。今回のレースもスタートから飛び出して主導権を握ることだろう © Donald Miralle for IRONMAN
結果を左右するのはこちらもニブと同じく本番に向けてのコンディショニング。
10月のハワイでも序盤から飛び出して快走を見せつつも、ランの中間点で失速&リタイアしており、そこからのリカバーに注目が集まる。
実はチャールズ = バークレーとテイラー・ニブのコーチは同じ(ダン・ローラン氏/ツール・ド・フランス出場チームのコーチングディレクターとしても活躍)で、その指導手腕が結果を左右することになるのかもしれない。(※チャールズ = バークレーについては、ローラン氏はプログラム責任者的な立場となる)
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ソールヴァイ・ルーセット(🇳🇴ノルウェー)
先月開催された アイアンマン世界選手権コナ を大逆転劇で制し、時の人となったルーセット。今年からロングに挑戦し、アイアンマン3戦目にしての快挙は多くの人を驚かせた。
昨年までは51.5kmをメインに活動し、2024年パリ五輪の母国代表でもある彼女にとって、ミドルディスタンスはアイアンマンよりも適性度が高いはず。よって今回、一気に優勝候補の一角に挙げられている。

今回でアイアンマン、アイアンマン70.3チャンピオンのダブルタイトル獲得なるか? © Ezra Shaw/Getty Images for IRONMAN
ビッグタイトル獲得後も気負うことなくマイペースでリカバー、そしてマルベーリャに向けて調整してきているようで、やはり目の離せない存在に。
持っているスピードはトップレベルであるのは間違いないので、本人が組み立てたプラン次第では、序盤からルーシー・チャールズ = バークレーを上回るパフォーマンスを見せても何ら不思議はない。
ハワイではトップのバイクラップ(4時間31分53秒)をたたき出している点も、ライバルたちにとっては脅威に映っていることだろう。
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カット・マシューズ(🇬🇧イギリス)
昨年からスタートした アイアンマン・プロシーリズ の2024年間ランキング 1位。2025年シリーズも現在1位をキープしていてシーズン連覇をこのレースで決めたいマシューズ。
前回の70.3世界選手権・タウポ大会(写真下)では、テイラー・ニブに続く2位に入っており、ミドル〜フルディスタンスで抜群の安定力を有しているアスリートといえる。

ただ前述の3人に対しては、後半のラン勝負に展開を持ち込むしかなく、距離の短い70.3では勝負所を早めに作る必要がありそうだ。
一方で10月のハワイのランでたたき出したラップは2時間47分23秒(トップ)。そのパフォーマンスを上回る走りを今回、バイク後に披露できれば悲願の世界タイトル獲得もあるかもしれない。
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【男子プロ】11月9日(日)・15時50分スタート ※日本時刻
翌日行われる男子プロ・レースの注目は何と言っても “ノーウィージャン・トリオ” のパフォーマンス。
9月にフランス・ニースで行われた男子アイアンマン世界選手権の表彰台を独占したノルウェー選手たち、カスパー・ストルネス(優勝)、グスタフ・イデン(2位)、クリスティアン・ブルンメンフェルト(3位)の走りだろう。
それをディフェンディングチャンピオンたちがどう迎え撃つか? ここが大きな焦点となる。
イエレ・ヒーンス(🇧🇪ベルギー)
2024年のアイアンマン70.3世界王者(ニュージーランド・タウポ/写真下)で、今年はプロシリーズ開幕戦となる70.3ジーロング大会を3時間33分24秒で優勝。
T100 トライアスロン・ワールドツアーでは5月のサンフランシスコ大会 2位、6月のバンクーバー大会優勝などミドルディスタンスで図抜けた適性を現在見せ始めている。

それまでは51.5kmを主戦場とし、WTCS横浜大会出場のため来日したこともある、2024年パリ五輪代表のオリンピアン。
スイムからスムースな出だしを得意としながら、後半の粘りも大きな武器としており事実、昨年のタウポでもランで逆転して勝利している(ランラップ・トップをマーク)。
今回も終盤勝負に持ち込み連覇を果たすことができるか?
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リコ・ボーゲン (🇩🇪ドイツ)
2023年の70.3世界チャンピオン(フィンランド・ラハティ)。22歳の最年少優勝という衝撃で頭角を現し、以降もミドルを中心に存在感を示してきた。

一昨年からは T100シリーズを中心に活躍し、現在はPTOワールドランキング 5位。
バイクでの高出力ライドとトランジションの早さが大きな武器となっている。スイムで先頭グループに残り、バイクで主導権を確保できればランで粘る勝ち筋が見えてくるだろう。
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クリスティアン・ブルンメンフェルト(🇳🇴ノルウェー)
東京オリンピック金メダリストにして、アイアンマンでも数多の実績を残し続けていることは周知のとおり。
2022年はアイアンマン、そしてアイアンマン70.3の世界選手権ダブルタイトルを獲得している(いずれもアメリカ・セントジョージ大会)。
今年9月のアイアンマン世界選手権ニースでは、彼のトレードマークであるカデックスTRIで起伏の激しいバイクコースを克服しており、今回も大本命のひとりとなる。

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グスタフ・イデン(🇳🇴ノルウェー)
アイアンマン世界選手権のタイトルはフルディスタンスでは2022年のハワイ、そして2019年の70.3ニースと2021年の70.3セントジョージで獲得。アイアンマン70.3ではコロナ禍で2020年大会が実施されていなかったので、連覇ということになった。
ここ2年はなかなか思うような結果を残せていなかったようだが、今シーズンはアイアンマン・フランクフルトで4位、そしてニース世界選手権では2位とついに調子を取り戻し、再びのタイトル奪取を目指す。

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カスパー・ストロネス(🇳🇴ノルウェー)
ブルンメンフェルトの3つ年下。ショートディスタンスではU23時代から活躍し続け、2018年のWTCSバミューダ大会ではブルンメンフェルト、イデンの3人で表彰台を独占(1位:ストロネス)。ノルウェー旋風を巻き起こし注目を集めた。
以降、アイアンマン70.3なども含め幅広いレースをカバー&実績を残し、昨年はWTCS横浜大会にも出場している(37位)。

フルディスタンスのアイアンマンは、今年から本格的にチャレンジして6月末のフランクフルト大会で3位に。
そして9月のニース大会で奇しくも2018年と同じくノーウィージャンの表彰台独占、しかもアイアンマン世界選手権でという快挙を成し得ることとなった。
今まで以上に注目を浴びる今レースで結果を残せれば2026年シーズン、ブルンメンフェルト、イデンを押しのけての主役に躍り出ることになるだろう。
【女子プロ出場者リスト】11月8日(土)・15時50分スタート

【男子プロ出場者リスト】11月9日(日)・15時50分スタート
