今回のツール・ド・フランス(TDF)でも登場し、エアロロード・バイクの最高峰のひとつとして注目されていたサーヴェロの新型 S5が、メーカーから正式発表された。
昨シーズンよりサーヴェロのバイクを使用するワールドチームのユンボ・ヴィスマ。今回のTDFで、チームのダブルエースのひとりとして出場したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が、チームの悲願でもあるパリ・シャンゼリゼにマイヨジョーヌを着て凱旋した後という、できすぎたタイミングでの正式リリースとなった。
この “エアロロード” というカテゴリーは、トライアスリートにも親和性が高いと考えられる。なぜなら国内レースに出場している選手のバイクを見てみると、ロードバイクを使用しているケースも多く見られるからだ。
その中で、エアロ効果による高い独走力を発揮できるモデルは魅力になるのは間違いない。
ところで今回、ツール・ド・フランスを見て注目したのは、ピレネーなどの山岳ステージでも、この S5 で出走している選手が数名いたことだ。これには道中の平坦区間の走りを考慮したチームの作戦や、選手の好みによるところもあるかもしれない。
ツール第17ステージでのレースパドックにて。ピレネーの山を前にS5(手前)をチョイスする選手もいた。ちなみに奥の18番車(黄色いバーテープが巻かれた軽量バイクのR5)は、ヨナス・ヴィンゲゴーのバイクだ
ただセオリー的には超級山岳などを含むコースでは、エアロ効果よりも軽さを優先させる。
近年は、『軽量オールランダー』というロードバイクの次世代モデルもスタンダードになりつつあり、TTを除く全ステージを、1モデルで戦うチームも出てきている。
その一方で、多くのチームはいわゆる軽量の純ロードバイクと、エアロロードとの2モデルをコース適性やライダーのリクエストによって使い分けているのが現状だ。
ピレネーのコースを軽量のR5で力走するヴィンゲゴー © A.S.O. / Pauline Ballet
そんな中、激しい登りが待ち受けるピレネーステージでも S5 が走っていたといわけだ。
この事実を素直に受け止めると、S5 はどのようなコースコンディションにも対応できる、さらなる高い性能を備えたモデルに進化したということだろう。その理由の可能性も含めながら、新モデルの特徴をツールの現場目線で見ていこう。
まず新型 S5 の一番ポイントは、トライアスロンモデルのP5の設計を生かしたデザインのフロントまわりだ(写真上)。
フロントフォークを覆うフレームのヘッドまわり(前部)の形状は、前モデルよりも(覆う部分が)さらに前方に張り出し、全体の形状もより平べったく前後に伸びた。写真で見てみても、確かにP5を踏襲しているというか、それよりもさらに進化させたデザインにも見て取れる。
また前方から見た形状も前モデルからさらにスリムに。フレームでは最初に風が当たる(ヘッドまわりの)空気抵抗の削減を狙っている。
リアまわりのデザイン変更も大きい。
まず近年のトレンドに漏れずワイドタイヤに対応すべく、設計を微調整。標準で28mm幅のタイヤが利用できるほかに最大34mmまで対応できるようになっている。
シートチューブの下部はフィン形状となり、この部分でも空気抵抗の軽減を狙っている(写真下)。細かい部分までブラッシュアップされているといえるだろう。
また、メーカー完成車にはリザーブ社製のエアロ・カーボンホイールが標準装備される。
ユンボ・ヴィスマはこれまでコースの用途などに応じて同社のホイールを使用してきたものの、チーム自体はシマノの機材サポートを受けている関係からか、ロゴなどは一切表示させず公にしてこなかった。しかし今回のTTステージではメーカー名が入ったホイールが使用されていたのも印象的だった。
そして、メーカー発表によるところで最も注目すべき点が、現在のサーヴェロの技術の粋を結集させて若干重量を減らしながらも(65g)、フレーム全体的の表面積を増やしているということだ。
これはトライアスロンバイクの定石だが、空気抵抗を減らすためにまず考えるのが、扁平形状(縦長)に近づけるために、フレーム面積を増やすということ。
以上からからも(表記がややこしいが)S5 は P5 の設計&コンセプトをさらに投下させたエアロバイクになったとも表現できるだろう。
マイヨベール(スプリント賞)を獲得したワウト・ファンアールト(ベルギー)の最終ステージの S5。賞ジャージの色に合わせてバイクをアッセンブルするのはもはやツールの定番。もちろんヴィンゲゴーのバイクはイエローだ
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