ツール・ド・フランス2020 <The “Race bubble”>

コラム

2020ツール・ド・フランスが今年のグランデパール(Grand Depart)となるニースで8月29日からスタートした。多くの世界的スポーツイベントと同様、新型コロナウィルスの影響を受け約2カ月延期での開催となったが、この日を心待ちにしていたトライアスリートも多かったのではないだろうか。TRIATHLON LIFE ではこの世界最大の自転車レースをトライアスリート目線でリポート。普段知ることのできないレースの舞台裏や、バイクなどの注目機材&先端エキップメント情報を現地からお届けしていく予定だ。
まずは8月27日に実施された恒例のチームプレゼンテーションを切り取ってみよう。レースの延期が発表されたあとも、刻々と状況が変わっていくヨーロッパの感染状況から正直「今年は実施できないのではないか?」と編集部は考えていたのだが、主催者は7月下旬にメディア登録を受け付けるとアナウンス。フランス中が熱狂する歴史あるレースに中止などありえない、といった強い意志がにじみ出ているように感じた。
そして今年のレースを安全に運営するために取り入れられたレギュレーションが “Race bubble(レースバブル)” という概念。選手、そしてチーム関係者と主要なオーガナイザーなどを “Race bubble” と位置づけレース期間中、他のあらゆる関連者、ギャラリーからソーシャルディスタンスを担保し、レースを実施するというもの。これはレース会場だけでなく日々移動を繰り返すチームホテルなどでも同様で、選手の家族でさえ接することができないという。もともと各会場でのゾーニングにおいて、他に例をみない完成度を目の当たりにするレースではあるのだが、さらにコントロールを厳格にするということだろう。
そのお披露目ともいえるチームプレゼンテーションではレース関係者はもちろん、1席ずつ間引かれた会場に集まった観客全員がマスク必着。奇しくもパリでは感染拡大がとまらずマスクの着用が義務化されたばかりだが、ニースの会場では主役となる選手たちもステージへの移動時までマスクを着用していた。その選手の待機所から400m以上続く会場への動線はフェンスで完全に覆われ、警官、警備員も昨年より多く感じるくらい。取材2年目となる当編集部は比較材料が乏しいが、ベテラン記者をしても「過去に例を見ない」規制だったという。このレギュレーションが29日からスタートするステージにどのような影響を与えるのか。予測が難しい特殊なレースとなるのは間違いない。

「バブル」とは直訳すると泡。ほかに「ドーム型の建物」といったような意もある。賛否はあるだろうが、今の状況下でパリ・シャンゼリゼまでレースを進めるために、この “Race bubble” を『すべての関係者がリスペクトしなければならない』というのが主催者からのメッセージだった。
一方でこれだけの規模のイベントを成立させようとする感染対策は、トライスロンを含む他のスポーツにも参考になる点は多いのではないか。今後、ステージが進む中でそういったポイントにも注目していきたい。

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