自転車界のスーパースターがアイアンマンに挑戦する?
今シーズン、ロードとシクロクロスの世界選手権で王者に輝いたマチュー・ファンデルプール(オランダ/アルペシン・ドゥクーニンク)の、YouTube上でのコメントが話題を呼んでいる。
2021年に満を持しての初出場となったツール・ド・フランスではステージ優勝を果たし、ツアー前半はマイヨ・ジョーヌも着用した
ロードレース、シクロクロス、マウンテンバイク。
ジュニア時代から競技環境の違う自転車種目でトップを走り続けているファンデルプールは、2023シーズンは2月に母国オランダで行われたUCIシクロクロス世界選手権で自身5度目のタイトルを獲得。
9月はスコットランド・グラスゴーでのロード世界選手権でも優勝するという偉業を成し遂げている。
またマウンテンバイク・クロスカントリーでも2019年に欧州タイトルを獲得し、2021年の東京五輪に出場するなどまさに変幻自在、他の追随を許さないスーパーサイクリストといえるだろう。
「マチュー、このビデオが『4万2,000いいね!』を獲得したらアイアンマンに挑戦するというのはどう?」
「(即答で)分かったよ。。。でもレースはいつなの?(条件をクリアしたら)スケジュールを合わせないと」(ファンデルプール)
「好きなレースを選んで! 僕らも一緒に出るから!」
きっかけは欧州を中心に人気のベルギー人コメディアン、ロバート・ファンインペの YouTubeチャンネル でのやりとり。
マチュー・ファンデルプールがMTB挑戦企画にゲスト出演した回のエンディングだった。
このユーチューブは、主にいろいろなアウトドアスポーツやイベントにファンインペ兄弟がユーモアたっぷりに取り組んでいくという番組。
4カ月前にはアイアンマンに挑戦する企画が配信され、アイアンマン・オーストリアでそれぞれ12時間26分、15時間39分で見事完走を果たしている。
ファンデルプールが東京オリンピックで利用したマウンテンバイク(手前)。日本のアニメをイメージした特別デザインで参戦していた。
【サム・レイドローもアイアンマン挑戦企画に登場】
その1カ月前には2023年アイアンマン世界チャンピオンのサム・レイドローが指導にあたったり(下参照)、過去にはショートのトップアスリート、マルテン・ファンリール(ベルギー)が登場するなどトライアスロン色も豊かなチャンネルだ。
スペイン・ランサローテ島で実施したアイアンマンに向けての合宿にはサム・レイドローがレース実践スイムを指南した!
そんな人気ユーチューブの最新プログラムに、ファンデルプールがマウンテンバイクの指導役として登場していたというわけだ。
この動画の最後にホスト役のファンインペが無茶振りともいえるリクエストを出したのだが、なんとファンデルプールは快諾。
配信ビデオが『4万2,000いいね!』を獲得すれば、という条件がついたものではあったが、その話題性から『いいね!』のカウントは一気に9万を超え目標を達成した。
旋風を巻き起こした2021年のツールでのファンデルプール
シクロクロスは途中、自転車を担いで坂道や階段を駆け上る区間を含む複合競技ともいえる。心肺機能はもちろんのこと強靭な脚力が必要とされ、ファンデルプールの身体能力は計り知れないものがある。
その一方で本場ヨーロッパでのシクロクロス・シーズンは冬がメインとなるため、ほとんどオフのないシーズンを送っている彼が、準備も含めてアイアンマンに出場することは現状は不可能といえるだろう。
しかし、期待をふくらませる実績はある。
実は彼、過去に同じファンインペのユーチューブに登場したときに、『いいね!』獲得が1万を超えればふたりにマウンテンバイクを教えると公約していて(すぐに達成された)、それで今回の番組参加となっていたのだ。
約束は守るファンデルプール。
過去にトップサイクリストがアイアンマンに出場するということは幾度もあったが、そのほとんどが現役を引退したあと。
近年ではイギリスのワールドチームに現在所属する キャメロン・ワーフ(オーストラリア)のアイアンマンでの活躍が注目されているが、仮にロード&シクロクロスの世界チャンピオンが参戦するとなると、競技の枠を超えた注目の4刀流プレイヤーとも形容できるだろう。ビッグニュースになることは間違いない。
さて、このあとどのような展開が待ち受けてるだろうか?
《ファンデルプールの愛車 / キャニオン・AEROAD CFR》
彼がレースで使用しているメーカーは、トライアスリートにも人気のキャニオン。もちろんタイムトライアルは Speedmax CFR TT を駆る。(タイトル写真)
トライアスロン界ではサム・レイドローやヤーン・プロデーノ、チェルシー・ソダーロなどの歴代アイアンマン世界選手権チャンピオンなどが、キャニオン・ユーザーなのはお馴染みだろう。
今年のツール・ド・フランスを走ったマチュー・ファンデルプールのAEROAD CFR。実はこれ、アップデート・モデルのベースとなるスペシャルなバージョンとも噂されていた
ファンデルプールがロードレースの通常ステージで乗るのが AEROAD CFR(写真上)。
F1の元エンジニアが創設した「スイスサイド社」と協業し、最先端の風洞実験やコンピュターでの流体解析を経て生み出されたフレーム設計のエアロロードモデルだ。
そして上のバイクは、今年のツール・ド・フランスでステージ4勝を挙げ、圧倒的なスプリント力を発揮したヤスペル・フィリプセン(ベルギー/写真下)の AEROAD CFR 。
チームメイトであるファンデルプールは、彼の強力なリードアウト(アシスト)役となり、チーム快進撃の原動力にもなっていた。
誕生50周年を迎えたシマノのデュラエースなど、比較的ベーシックなアッセンブルを基本としながらも、ロードレース界ではポピュラーにもなっている28mm幅のタイヤを使用。そのほか、トライアスリートにも役立つエッセンスが多々含まれている注目のマシンであった。