2025年12月、PTO(Professional Triathletes Organisation)とワールドトライアスロンが発表した新たな世界シリーズ「Triathlon World Tour」構想。
TRIATHLON LIFE でも報じてきたが(リンク記事👉 PTOとワールドトライアスロンが『トライアスロン・ワールドツアー』を発表 〜 2027年に世界シリーズを再編〜)、これは、それぞれの組織が別々に展開してきたシリーズ(PTOのT100、ワールドトライアスロンのWTCS/ワールドトライアスロン・チャンピオンシップシリーズ やワールドカップ)を再編・統合。
2027年から『Triathlon World Tour』という統一の世界シリーズとして展開していくというものだ。
その動きが、『Challenge Family(チャレンジファミリー)』との資本提携によって一気に加速する様相を呈している。

現在、世界30カ国以上でシリーズ展開するチャレンジファミリー。グローバルな人気を博しているイベントは、赤を基調としたイメージカラーで親しまれている © Challenge Family
PTOは今般、この Challenge Family を運営する組織の過半数株式を取得。
20年以上の歴史を刻み、現在は世界30以上のロングおよびミドルディスタンス・トライアスロンを展開するイベントシリーズとの戦略的提携関係を構築したことを発表した。
これは単なる出資ではなく、2027年から始動予定の Triathlon World Tour における大会ネットワーク拡張を見据えた “戦略的提携” と位置づけて良いだろう。
PTOとワールドトライアスロン、それぞれの主催シリーズを統合する新構想
今回の Triathlon World Tour 構想 は、これまで異なる主体が展開してきた主要シリーズを統合し、さらなる発展、そして波及効果を生むことを狙いとするものだ。

昨年12月にカタールで行われたT100チャンピオンシップ。男子世界チャンピオンに輝いたヘイデン・ワイルド(中央)と女子チャンピオンのケイト・ウォー(中央左)。その両脇で祝福するワールドトライアスロンのアントニオ・アリマニー会長(左)とPTOのサム・レヌーフCEO(右) ©PTO / World Triathlon
具体的には、
・T100シリーズ:PTOが主催する総距離100kmディスタンスの世界ツアー
・WTCS(World Triathlon Championship Series)およびワールドカップ:ワールドトライアスロンが統括するシリーズ
以上2つの軸をベースに、2027年からは
① T100 World Championship Series
② T50 World Championship Series(WTCSの改称)
③ Challenger Series
という新たな三層構造のシリーズへと再編される予定だ。
ちなみに、ここにある Challenger Series とは “トップシリーズへの登竜門” 的な位置づけで、世界選手権レベルの舞台へ進むための大会群。いわばトップカテゴリー(①、②)へ挑戦するためのステップとなる。
ツアー拡張を加速させるパートナーとなる Challenge Family
今回の発表で注目されるのは Challenge Family が、2027シーズンから始まる新ツアー(Triathlon World Tour)の大会基盤を拡張する重要な提携シリーズとして位置づけられている点だ。

昨年は Challenge Family アムステルダム大会が、ヨーロッパトライアスロンのロングディスタンス選手権と併催されている
Challenge Family は世界各地でロングおよびミドルディスタンス大会を展開してきた人気シリーズであり、地域コミュニティを重視した大会運営でも知られている。
2026年シーズンは従来通りChallenge Familyブランドで開催されるが、2027年以降は Triathlon World Tour構想の中で、より大きな国際シリーズの一部として組み込まれていく可能性が示唆されている。
今回の動向については、プレスリリースで「競技エコシステム再編」と言及&表現されているが、
これは専門的に言えば、『これまで別々に存在していた大会やシリーズ、それらに関わる放送やスポンサー構造をひとつの流れとして整理していく試み』ととらえると分かりやすいだろう。
これらはPTOのCEO、サム・レヌーフ氏のコメントに集約されている。
「今回の Challenge Family への出資と提携は、PTOにとって大きな節目となる出来事です。私たちはワールドトライアスロンとともに Triathlon World Tour を現実のものにしようとしています。
プロ選手だけでなく、アマチュア、ファン、メディア、スポンサーなど、スポーツに関わるすべての人が、トライアスロンの仕組みをより分かりやすく理解し、関わりやすくするために、ひとつのブランドと統一されたシリーズ構造を作り上げていきます」

2022年よりワールドトライアスロンとの提携を一部のレースからスタートさせているPTOのサム・レヌーフCEO
「Challenge Family は、質の高い大会運営、地域コミュニティを大切にする姿勢、そして長年培ってきた運営力を備えており、私たちにとって非常に自然なパートナーです。さらに、トライアスロンを次のステージへ押し上げ、これまで十分に活かされてこなかった “新しいビジネスチャンス” や “世界に広がる可能性” を引き出したいという思いも共通しています。
私はヨルト(Challenge Family のCEO)と彼のチーム、そして世界中の情熱的な大会パートナーと力を合わせ、このビジョンを実現していけることを楽しみにしています」
Triathlon World Tour と IRONMAN Pro Series
世界のトライアスロンのプロステージは “二大ストーリー” 時代へ
今回の Challenge Family との提携発表により世界のトライアスロンシーン、特にプロカテゴリーでは明確にふたつの大きな軸が並ぶ構図となりつつある。
そのひとつはもちろん、PTOとワールドトライアスロンが進める Triathlon World Tour。
ショートディスタンスから T100(100km)、さらにはロングディスタンスの大会ネットワークまでを横断する “統合型シリーズ” を2027年に具現化することとなるだろう。
そして、もう一方は IRONMANが展開する IRONMAN Pro Series。
アイアンマン世界選手権を頂点とし、トライアスロン創世記から長年にわたり確立してきた世界的ネットワークに、ブランド力というエンジンも備えて2024年にスタート。同シーズンこそ知名度は低かったが、2年目は着実に進化しており今シーズンは大きな飛躍を遂げることが予測される。

2026年は全16大会が行われる IRONMAN Pro Series
そして、今回の構想が本格化すれば、最も影響を与えるのがプロ選手の年間スケジュールだ。
これまで以上に「どこに主軸を置いて戦うか」、あるいは「どう横断させて2027年を組み立てるか」といった選択が重要になる。
Triathlon World Tour を中心に活動する選手、IRONMAN Pro Seriesを軸に据える選手、そして両方を視野に入れたハイブリッド型のシーズン設計――。
たとえば2028年のロサンゼルス五輪を目指す選手ならば、必然的に Triathlon World Tour へと向かっていくこととなる。
このように今後、トッププロたちはより戦略的な参戦計画が求められるだろう。
シリーズが増えるということは、プロとして活動するアスリートにとっては歓迎されるべきこと。
一方で、ただ単純にレースが増えるという意味ではなく、“どのタイトルを狙うか?”、“シーズン・ハイライトをどこで目指すのか?” といった競技キャリアの選択そのものに大きな影響を与える可能性を示している。
2027年に Triathlon World Tour が本格始動するころ、世界のトライアスロン・シーンは、これまでの常識を超えた絵図が描かれていても何ら不思議のないフェーズに突入している。
今回のアナウンスは、そんな状況も示唆しているといえる。