昨年のツール・ド・フランスは、第20ステージの個人TTで大逆転勝利。今年は第8ステージ終了時からマイヨジョーヌに袖を通し、以降盤石の走りで首位をがっちりとキープ。終盤のピレネー決戦では、もはや手のつけようがない爆発力でライバルたちを置き去りにしたタデイ・ポガチャル(スロベニア)。勝負に絶対はないが、今夜(7月17日)から始まるステージ2度目のタイムトライアルでよほどのトラブルがない限り、個人総合2連覇は確定的といえる。
そのポガチャルがスタートする7月18日の午前0時19分(日本時間)を前に、前回(6月30日)行われた1度目の個人TTで、UAE チーム エミレーツ(アラブ首長国連邦)が投入したバイクをチェックしておこう。
明日の未明、ツール・ド・フランスに新しい歴史が刻まれる前に。
タディ・ポガチャルが使用するバイクと同じタイプの K.ONE。トップチューブが下がったスローピング形状、そしてコンパクトなフレームデザインに注目
ポガチャルが駆るTTバイクは昨年と同様、コルナゴ『K.ONE』。いわずと知れたイタリアの名門メーカーがラインアップするファスト・バイクだ。ツール・ド・フランスに出場しているUAE チーム エミレーツの全体仕様はコンポーネンツ&ホイールなどすべてがカンパニョーロ、そしてサドルまでもプロロゴ(Prologo)を使用するなど見る限り“オールイタリアン”で固められている。ヨーロッパが舞台のツール・ド・フランスにあっても、今となってはこの組み合わせは希少といえるのだが、イタルデザインに目がないトライアスリートにとっては気にならないわけがないだろう。
フレームにスロベニアの国旗をあしらったカラーリングが目につくポガチャルのスペアバイク。コルナゴ ✕ カンパニョーロはすなわちイタリア ✕ イタリアでもある
K.ONE の特徴のひとつにトップチューブがエンドに向かってゆるやかに下がっている「スローピング」形状のフレームが挙げられる。これによりフレーム重量も含め、全体をコンパクトにまとめて取り回しやすさや機敏性を高める狙いがくみ取れる。市販モデルではトライアスロン専用のアタッチメント&パーツも用意されていて、レースで威力を発揮してくれそうだ。
ブレーキシステムがまだディスク化されていない点が少々残念だが、細部にわたり洗練されたTTバイクに仕上がっている。マイヨジョーヌを着たポガチャルがこれを駆り、リスクを冒さず攻めの走りを見せれば、明日(1回目のTTに続き)再びトップタイムを叩き出す確率は高いのではないだろうか。
トライアスロンでも復活するか?
一方トライアスロン・シーンに目を向けると、イタリアの老舗メーカーということもあってか、アイアンマン・ハワイなどでもあまり見かけることがないようだ。
しかし、過去を振り返ると1996年、99年とハワイを制し、2000年前半までアイアンマン・シーンを席巻したルク・ヴァンリルデ(ベルギー)が使用していたのがコルナゴだった。ハワイ優勝バイクは『レコード(Record)』の名を冠し、フロント26✕リア27インチホイールを組み合わせたいわるファニーバイク。このデザインは業界に大きなインパクトを与え、トライアスロンバイクの一時代を築いたといっても過言ではない。
それから時を経たものの、ツールでさらに存在感を増しているポガチャルが駆るコルナゴは、欧州のトライスロン界にも大きな影響を与えることは間違いない。
ちなみに、近年のツール・ド・フランスでは個人総合トップに立ったライダーのバイクが、黄色いカラーリングをあしらった『マイヨジョーヌ仕様』にドレスアップされることが定番となっている。ポガチャルが通常ステージで乗るオールラウンド・ロードモデル V3-RS もイエロージャージを着て走るその日から、特別デザインのバイクとなっていた(写真下)。さて今回の K.ONE のカラーデザインはどうなっているのか? 日本時間の17日夜、確認でき次第このコラムに追加速報する予定だ。
ポガチャルが使用する軽量ロードバイク V3-RS も現在はマイヨジョーヌ仕様となっている
<7月18日 午前0時30分追記> ※日本時間
第20ステージ、個人TTスタート前のポガチャルのバイクをチェック。ベースは6月30日走行時のモデルと同じだが、シートポストやペダルなどの一部パーツをイエロー仕様に変更して登場してる。さてどんなタイムを叩き出すのだろうか?!