2007年に航空宇宙産業やモータースポーツといった最先端の工学技術を専門とするエンジニアリング会社から誕生したイギリスのブランド、FACTOR(ファクター)。2017シーズンから、ツール・ド・フランスにも出場するAG2R(アージェードゥゼール/フランス)へのサポートを開始したことで一気に有名になり、2020年からは新興イスラエルチームのイスラエル・スタートアップネーションにバイクを供給。あのクリストファー・フルーム(イギリス)が今シーズンから所属しているチームでもある。
山岳ステージ向けの超軽量バイクや、エアロバイクでありながら軽量オールラウンドの要素を兼ね備えるモデルなど意欲的なラインアップが目を引く中、それら技術の粋を取り入れたTT&トライスロンバイクが SLICK だ。
外見の特徴としては同社のロードモデルの最高峰ともいえる超軽量エアロロード、オストロVAM(写真下)を、さらに空気抵抗の削減を目的としたフォルムに発展させたフレームデザインといえる。
空力を意識したエアロロードバイクでありながらフレーム重量が780gというオストロVAM
パーツ類もトライムトライアル(TT)の要素を考慮したチーム独自のアッセンブルが見られる。メインコンポーネンツはシマノ・デュラエースだが、セラミックスピード社のビッグプーリーやブレーキのディスクローターがスイストップ製など細部でカスタマイズされている。パワーメーターはシマノ・デュラエースのクランクセットをベースとした4iiii(フォーアイ)、ホイールは選手によってHEDとブラックインク製とを使い分けていて、いずれもフロントにディープリム、リアにディスクの組み合わせだった(写真下)。
DHバーは他チーム同様、カスタマイズされたアップライトなポジションが目についたが、ヘザー・ジャクソンなどが使用するトライアスロン専用DHバー『51 SPEEDSHOP』製の MONO-RISER AEROBAR が装着されたバイクがあったのもトピックのひとつといえる(写真下)。
トライアスロン専用といえる『51 SPEEDSHOP』製の MONO-RISER AEROBAR は要チェックだ
もちろんこれらのバイクはUCIの規格内に収まっているわけだが、フレーム形状、パーツアッセンブルを含めてツール・ド・フランスに出場している中で、非常にトライアスロン色が強いバイクを採用しているチームのひとつといえる。
クリストファー・フルームは、1回目の個人TT(6月30日)ではトップのタディ・ポガチャル(スロベニア/UAE チーム エミレーツ)から4分20秒遅れだった。復調にはまだ時間がかかりそうなフルームだが、7月17日の2回目の個人TTでどのような走りを見せるのかにも注目しておきたい。