『BEYOND HUMAN』。壮大なキャッチコピーが冠され、8月28日(土)にスロバキアの西部・シャモリンで世界中のプロトライアスリートが注目するレース、コリンズ・カップが開催される。出場するのは各国から選りすぐられた男女36人の選手。賞金の総額が150万ドル(約1億6,500万円)というこれまでにないスケールといえるイベントだ。
初開催となるレースはユニークなフォーマットが特徴。欧州圏のアスリートで構成されるチーム・ユーロ、アメリカ選出のチームUS、そしてそれ以外の国(今回はカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの4カ国)のメンバーからなるチーム・インターナショナルの3チーム・各12人ずつ(男子6人、女子6人)で争う団体戦となる。ここでユニークと記したのは「Head to Head」形式、つまり各チーム1名ずつを選出し3人だけのレースを12戦実施するという内容だ。10分おきに順次スタートし、各レースの順位(1〜3位)とタイム差に応じてポイント換算し、全12マッチのトータルで最多のポイントを獲得したチームが優勝。レースシンボルの“コリンズ・カップ”が載冠される。
今回選出されたアスリートは2014年に設立されたPTO(Professional Triathletes Organization)ランキングの上位選手(男子4人、女子4人)とチームキャプテンが指名した4人。アイアンマン世界チャンピオンからオリンピックメダリストまで、今のトライアスロンシーンを牽引している豪華な面々が顔をそろえることとなった。たとえばチーム・ユーロからはヤーン・フロデノ、パトリック・ランゲ、セバスチャン・キーンレ、そしてダニエラ・リフの男女のアイアンマン・ハワイ覇者やルーシー・チャールズ-バークレーなど、チームUSからは東京オリンピック・女子トライアスロン銅メダリストのケイティー・ザフィアエスやテイラー・ニブ、さらにはチーム・インターナショナルから2017年ITUロングディスタンス世界選手権覇者のライオネル・サンダースなど、世界のメジャーレースのタイトルホルダーが名を連ねている。
競技距離はスイム2km、バイク80km、ラン18kmのミドルディスタンス。アイアンマンを主戦場にしているアスリートから51.5kmで実績を残す選手すべてをカバーできる設定で、この豪華なラインアップを可能にしたともいえる。
オープニングセレモニーでチーム・ユーロのメンバーを発表するナターシャ・バドマン(左)とノーマン・スタドラー。トライアスロン界のレジェンドたちをチームキャプテンに擁するなど話題にこと欠かない演出にも注目したい
チームキャプテンにはマーク・アレン&カレン・スマイヤーズ(US)、ノーマン・スタドラー&ナターシャ・バドマン(ユーロ)、サイモン・ウィットフィールド&リサ・ベントレー(インターナショナル)とトライアスロン界のレジェントたちが務め、レースをさらに華やかなものへと仕立てている。8月26日(木)に行われたセレモニーではデイブ・スコットによる開会のアナウンスとともに、各チームキャプテンよりスタート順(組み合わせ)が発表されるなど、演出にもこれまでにない趣向が凝らされていた。
大会HPでは注目アスリートのメイキングストーリーなども視聴できる。写真はルーシー・チャールズ-バークレーの撮影シーンから
さらに注目すべきは選手が獲得する賞金だ。今回のレースに基づくランキングで順位づけされた男女トップ(個人)には各9万ドル(約1,000万円)、2位に約900万円と配分され、最後となる18位の約200万円まで合計1億6,500万円が用意されている。初回開催のレースとはいえ、これには世界中のプロトライアスリートが注目しないわけがないだろう。
レースの主催者(PTO)はこの選出基準としているシステム(ランキング)を、ゴルフやテニスの世界プロランキングをモデルに創設したとしており、そういう意味でコリンズ・カップは、テニスの年間王者決定戦となるATPファイナルズと同じ位置付けになるといえる。もちろんこの主旨のレースは毎年行われる予定で、継続されれば新たなビッグレースとしてプロ選手たちの重要なターゲットとなるだろう。
独自ランキングによるチャンピオン決定戦、他のメジャー・プロスポーツにも匹敵する賞金総額、チーム対抗の要素など、エンターテイメント性をふんだん盛り込んだ新たな観戦型トライアスロンともいえるこのレースは、メディア発信もワールドワイドだ。テレビ放映は世界約100カ国・地域にわたり、日本でも有料チャンネルではあるが CSフジテレビNEXT でライブ放送される。
もちろん専用アプリでのインターネット放送で誰でも視聴が可能(大会ホームページからダウンロード)。レースのライブ配信は日本時間8月28日(土)の午後7時30分から始まり、午後8時から女子、午後10時から男子の各マッチがスタート。レース終了後もオンデマンドで視聴が可能だ。
オリンピックの初代金メダリスト、アイアンマン・ハワイ6勝のレジェンドなどオールドファンも目移りするチームキャプテンたちが名を連ねる
大会名にある“コリンズ”は1978年にハワイ・オアフ島で第1回大会が開催されたアイアンマン世界選手権の創設者であるジョン・コリンズと妻のジュディ・コリンズをリスペクトしたもの。ふたりは1974年、アメリカはサンディエゴで行われた最初のトライアスロン大会とされているミッション・ベイ・トライアスロンの参加者でもあるのは知られた話である。このスポーツのルーツともいえる名前を冠したレースは、トライアスロンのさらなる価値観を創造し、新たなステージへと導くことになるのだろうか。いずれにせよ、自身の目で確かめてみる価値は大いにあるといえる。
>> コリンズ・カップの大会HP ※リンク
オープニングセレモニーで発表されたレースの組み合わせ。出場リストも演出のひとつとなっている