4月26日にアイアンマン・テキサスが開催 / 2025シーズンに見るプロ・フィールドの勢力図 〜 IRONMAN プロシリーズ vs. PTOレース 〜

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今週末、4月26日(土)に米国テキサス州ウッドランズでアイアンマン・テキサスが開催される(タイトル写真は昨年時のもの)。 ※日本時間では同日午後8時25分に男子プロのスタートが切られ、5分後の午後8時30分に女子プロが続く予定)
この大会は、昨年スタートした アイアンマン・プロシリーズ の北米エリア初戦であり、フルディスタンスでは3月の南アフリカ大会に続くレースとなっている。

出場ラインアップは豪華そのもの。
男子では、東京五輪金メダリストで IRONMAN世界王者(セントジョージ大会)のクリスティアン・ブルンメンフェルト(NOR)、2022年世界選手権コナ(ハワイ)王者のグスタフ・イデン(NOR)らが名を連ねている。
女子では、2024年IRONMAN Pro Series チャンピオンであり昨年のテキサス大会優勝者のカット・マシューズ(GBR)。アイアンマン70.3で2度の世界チャンピオンに輝き、注目のシリーズ大会でのフルディスタンス初挑戦となるテイラー・ニブ(USA/写真下)、さらに2022年KONAチャンピオンのチェルシー・ソダーロ(USA)など、実力と話題性を兼ね備えた面々が会すこととなる。

一方、4月6日にはPTO(Professional Triathletes Organisation)とWorld Triathlonが主催するシリーズ戦「T100 Triathlon World Tour(T100シリーズ)」の第1戦がシンガポールで開催されている。
このT100は年間8戦で構成されるプロ選手選抜制のワールドツアーであり、1戦あたりの合計賞金額が25万ドル(約3,800万円)、年間ランキングには総額500万ドル(約7億6,000万円)という破格のボーナスが用意されている注目シリーズだ。

シンガポール大会では東京五輪銅メダル、パリ五輪銀メダルのヘイデン・ワイルド(NZL)が男子レースを制し、51.5kmレースからミドルディスタンスへの確かな順応性を証明。
また、このT100シリーズの出場ノミネートリストには、サム・ロング(USA)、ルーシー・チャールズ – バークレー(GBR)、アシュリー・ジェントル(AUS)などタレント性豊かなビッグネームが並び、今シーズンも世界のプロトライアスロンシーンを賑わせてくれるはずだ。

対する IRONMAN Pro Seriesは、昨年はポイント制度の複雑さやシリーズ認知度の低さなどもあり話題性に欠けていた側面は否めなかった。
しかし今シーズンは有力プロ選手たちの視線が集まり始めており、ホットな話題を数多く提供してくれそうだ。その背景には「世界選手権出場に直結する構図」や「年間スケジュールの見通しやすさ」などがあるだろう。

なお、IRONMAN Pro Seriesは2025年シーズン、フルディスタンスと70.3を合わせて18レースが対象となっており、年間ランキング賞金として総額170万ドル(約2億6,000万円)が設定されている。
各レースの賞金額は大会によって異なるが、フルディスタンスのIRONMANレースでは概ね総額約75,000〜125,000ドル(約1,100〜1,900万円)が目安となっており、上位10名までが賞金を得る形式が採用されている。

これらを背景に、今シーズン注目されているのはテイラー・ニブ(写真上)の動向だ。
彼女は一昨年、主催者推薦のようなかたちでアイアンマン世界選手権(ハワイ)に出場していたが、今回はフルディスタンスで初めてのシリーズ戦出場となるテキサス大会を選択。
一昨年のハワイ記者会見で語っていた、彼女の今シーズンの “本番(KONA)” へのルートを歩んでいる。

ブルンメンフェルトも今のところ同様の路線を進む。
4月の 70.3オーシャンサイド大会に出場するもバイクトラブルでDNF。雪辱を期すテキサスでは元アイアンマン世界王者のプライドをかけた走りに期待がかかるだろう。
また彼と並ぶノルウェーの盟友、グスタフ・イデン(写真下)も今季は Pro Seriesを主戦場とする姿勢を見せているようだ。なお、ブルンメンフェルトたちは T100 の2025年選抜リストには名を連ねていない。

PTOのT100はワールドランキングによる選抜制を採用しており、そもそもリストにノミネートされていない選手は出場できないわけではある。ただし、T100では毎戦ワイルドカードが数枠用意されており、これらの選手も今後招待される可能性はあるだおう。

ルーシー・チャールズ=バークレー(GBR/写真下)も注目株だ。
一昨年のKONAチャンピオンであり、今季のT100シンガポールでは3位入賞。昨年は IRONMAN と T100 両シリーズをまたぐ形でシーズンを展開しており(後半は故障のため活動していない)、今年も全体バランスをとりながら、出場レースを選択していくのか注目が集まるだろう。

一方で、パトリック・ランゲ(GER)は今季、主に IRONMAN Pro Seriesにフォーカスすることを自身のSNSで明言しており、アイアンマン世界王者としてのプライドが光る。
そして3月に行われたIRONMAN南アフリカで優勝を遂げたマグナス・ディトレフ(DEN)も、レース後のインタビューで「今シーズンはPro Seriesを中心に戦う」と公言している

これらの背景を鑑みると、2025年のトッププロ、そして彼らが活躍する舞台ははまさに群雄割拠。
選手たちはT100、IRONMAN、またT100シリーズのロングカテゴリーとして提携の姿勢を見せているChallenge Roth など多彩な舞台の中から自らの信念を基に、パフォーマンスを披露していくこととなるだろう。

いずれにせよ、シリーズ賞金がプロ活動の原資のひとつとなる中、選手たちにとって戦いの幅が広がるのは歓迎すべきことといえる。 そして “どこで勝利を目指すか” は今後の選手キャリアを形づくる選択肢となっっていくはずだ。

さらには、彼らが戦いの場を選ぶのと同じく、ファンもまた「どのレースに価値を見出すか」といった、見る側の姿勢も問われるシーズンとなるのかもしれない。

確固たる歴史と格式にも裏づけされているアイアンマンか。
エンタメ性と着実な世界戦略を展開している T100か
さらには上記に加えチャレンジ・レースなど群雄割拠のレースシーンを横断的に追っていくのか?

2025年、プロトライアスロンは確実に新たなフェーズに突入している。
そういった視点で、今週末のテキサス大会をレース結果も含めて追ってみても面白いだろう。

▶︎アイアンマン・テキサス/プロレーススタート(日本時間)
男子:4月26日(土) 午後8時25分〜
女子:4月26日(土) 午後8時30分〜

▶︎ライブ視聴はこちら:
YouTube(IRONMAN公式)配信リンク

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