2年ぶりとなるワールドトライアスロンチャンピオンシップシリーズ横浜大会(以下、WTCS横浜)、ワールドトライアスロンパラシリーズ横浜(WTPS横浜)が5月15日(土)に横浜市・山下公園周辺を舞台に開催された。
【パラトライアスロン】
11のクラスで行われたパラトライアスロンは午前6時50分から順次スタート。世界各国からWTPS横浜、WTCS横浜大会あわせて約190人のトップアスリートが集結して行われるイベントは、その規模とは相反して静かなオープニングとなった。これはスタートが土曜日の早朝というだけではなく、新型コロナウィルス感染対策のため、主催者が観戦の自粛を事前に周知していたことも関係しているたのだろう。
さらには、メイン会場となる山下公園エリアは観戦のための入場はできず、それでも沿道に足を運んだギャラリーたちは声を発することなく応援の拍手で出場者たちの走りをあと押ししていた。そのアスリートたちの視線の先にあるのはもちろん東京パラリンピック、そしてその後10時16分以降からスタートしたエリート男女は東京オリンピックだ。
今回大会を実施するにあたり、新型コロナウィルス感染対策を中心とした事前準備が困難を極めたことは想像に難くない。先述の約190人の出場者は35カ国を超える地域から集まっている。その選手たちの入国後のバブル(隔離)対策や滞在中のPCR検査(多い選手で7回実施)など、日本人選手も含めて厳重なオペレーションのもと開催を実現させていた。そういった意味でも今回の横浜大会はトライアスロン界のみならず、あらゆるスポーツ団体からも大きな注目を集めたレースといえる。そんな中でのWTPS横浜大会のスタートは、開催約2カ月を前にしたビッグイベントに向けての静かな、しかし力強い一歩となっただろう。
事前の沖縄合宿を経て横浜入りしたという宇多秀生(NTT東日本・NTT西日本/PTS4に出場)。多くの選手同様、前日のリモート記者会見ではコロナ禍での大会開催に感謝の意を述べていた
2019年からバイクのライディングスタイルを変えている(義足を使わず片脚でペダリングする)秦由加子(キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・稲毛インター/PTS2に出場)。レースではそのバイクで大きな手応えをつかむことができたという
レースではさらなるバイクの強化の必要性を感じたという谷真海(サントリー/PTS4に出場)。他クラスの選手と互角に渡り合えたのが自信になったとも ©Satoshi TAKASAKI/JTU
PTWC(ハンドサイクルと車いすレーサーを使用)など障がいの種類や程度によってクラス分けされているパラトライアスロン。8月の東京でも熱戦が繰り広げられるだろう
【リザルト】※クリックで表示
・PTWC男子 ・PTWC女子 ※PTWC/座位
・PTS2男子 ・PTS2女子 ※PTS/立位
・PTS3男子
・PTS4男子 ・PTS4女子
・PTS5男子 ・PTS5女子
・PTVI男子 ・PTVI女子 ※PTVI/視覚障がい
エリート女子/バイクから抜け出したテイラー・ニブが優勝
続く10時16分から始まったエリート女子。レースはバイクの2週目からテイラー・ニブ(アメリカ)、マーヤ・キングマ(オランダ)の2人が集団からエスケープ。逃げがそのまま決まり、続くランで力強い走りを見せつけたニブがワールドシリーズ初優勝を遂げた。
バイクフィニッシュ直後、キングマに先行を許したニブ(右)だが序盤で逆転。そのまま逃げ切った
日本人女子の最上位は高橋佑子(富士通)の21位。オリンピックランキング上位選手を増やし、シドニーから続く五輪出場枠3を決めたいところだった(現状は2枠)が6月に行われる次戦のWTCS大会に持ち越しとなった。
バイクで思った以上に流れに乗れずに苦戦したという高橋。しかしスイムでは確かな手応え(レベルアップ)を感じ多くの収穫を得られたという
・エリート女子結果 ※クリックで表示
エリート男子/小田倉真が16位を獲得。東京五輪出場へ大きく前進
午後1時の段階で気温25℃、湿度50%を上回るコンディションの中スタートしたエリート男子は、ノルウェーのクリスティアン・ブルンメンフェルトが優勝。41人の大集団に膨れ上がったバイク終了時から4人で抜け出し、ラン残り2km地点でライバルたちを振り切ってレースを征した。すでに五輪出場が決まっているブルンメンフェルトは「スーパーな結果だ。10年来の夢だったオリンピック、東京に向けてさらにギアを上げていきたい」と高揚した気持ちを素直に表現した。
レースに戻ってくることができた幸せを感じながら走ったというブルンメンフェルト。東京に向けての視界は良好か ©Satoshi TAKASAKI/JTU
日本人男子は期待選手のひとり、古谷純平(三井住友海上)がバイク4週目にパンク。そのままホイールステーションでの交換を求めてレースを進めるが、交換ポイントを通過するなどさらなるトラブルに見舞われてリタイヤとなる。そんな中最上位を獲得したのは同僚となる小田倉真(三井住友海上)。このレースに向けて標高1600mを超える高地でトレーニングを積むなどしてピーキングにも成功し、「今回が(五輪への)ラストチャンスだと思って」と集中力を発揮。16位に粘り込み東京五輪出場を大きく手繰り寄せた。
「まさか16位に入れるとは正直思っていなかった」という小田倉。ランで調子の良さを感じ粘り強い走りをみせた ©Satoshi TAKASAKI/JTU
・エリート男子結果 ※クリックで表示