アイアンマン70.3ランサローテが3月19日、スペインのカナリア諸島で開催された。
このランサローテ島はアフリカ大陸の西側、大西洋に位置するエリアでその温暖な気候が特徴。“Club La Santa” という一大スポーツ・コンプレックスを有し、多くのスポーツ選手がトレーニンなどに利用することでも有名だ。
1992年から現在にいたるまで、当時(90年代前半)は世界でわずか6大会しか数えなかったフルティスタンスのアイアンマンが開催され続けている特別な場所でもある。
タフなバイクコースと、リゾートエリアの風光明媚なコントラストもレースの特徴のひとつ
欧州アイアンマン・シーズンのキックオフを告げる70.3ラサローテ大会は、今年5月に開催されるアイアンマン世界選手権をターゲットに、ステップレースとして臨んできたプロ選手たちにも注目が集まった。
その中心はなんといってもアンネ・ハーグ(ドイツ/写真下)。2019年ハワイの女子レース覇者だ。
周知のとおりアイアンマン世界選手権は2019年を最後に2年以上実施されておらず、この1カ月半後にアメリカ・ユタ州セントジョージに舞台を移して行われるレースに、ロングの多くのトップアスリートたちが照準をあわせてきているのが現状といえる。
その注目のプロ女子レースを制したのはイギリスのカタリナ・マシューズ。2021年はアイアンマンUKで優勝、70.3世界選手権では4位をマークしており、もちろん5月のセントジョージにも出場する。
「世界チャンピオン(ハーグ)に勝てるチャンスはそうあるものではないですし、シーズン初戦の結果に非常に満足しています。ユタが本当に楽しみですね」(マシューズ)
そして2位に入ったのがレースの中心的存在だったハーグ。今回はセントジョージへの準備でもあると公言しており、トップと3分以上の差をつけられたものの、オフ・トレーニングの確かな手応えをつかめたようだ。
「タフな1日でしたが、バイクでパフォーマンスを確認できたのが大きかったですね。今日はカット(マシューズ)の走りが異次元でした。おめでとうと言いたいですね」
この後、もう1レースを経て本番(世界選手権)へ臨むという。
《女子リザルト》
1位 Katrina Matthews (イギリス) 4:17:46
2位 Anne Haug (ドイツ) 4:21:23
3位 Jess Learmonth (イギリス) 4:23:44
優勝したマシューズ(中央)、そして2位のハーグ(左)は5月のセントジョージへすでに照準をあわせている。3位に入ったのは、東京オリンピック混合リレーの金メダリストでもあるジェシカ・ラーモンス(写真下)。初のアイアンマン70.3のチャレンジとなったレースに、ロードバイク+DHバーで疾走する姿にも注目が集まった
【続々と登場するニューカマーたち】
男子レースでは2位に入ったカイル・スミス(ニュージーランド/写真下)が、5月の世界選手権への有力選手に名乗りを上げようと奮闘した。バイク終了時までトップを維持し、ランで逆転を許したもののランサローテのタフなコンディション(アップダウン&風)の中、上々のタイムをマーク。
これまでのキャリアで51.5kmまでをカバーし、昨年はコリンズ・カップのメンバーにも選出されたスミス。今シーズンからは本格的なロング挑戦のために(新型コロナウイルスの影響で各国間の渡航が困難になったこともあって)、スペインのジローナに拠点を移行。トレーニングパートナーにはあのヤーン・フロデノ(同じジローナを拠点)がおり、彼とも互角のトレーニングをこなしてきているという。
そして、なんと優勝したフランスのレオ・ベルジュールは2022年3月時点でのワールド・トライアスロン・ランキング1位、東京オリンピックにも出場(21位)しているファスト・アスリートだ(写真下)。
ますます高速化しているアイアンマンの舞台には、今後も彼らのような大きな可能性を秘めたファイターが次々と登場してくることだろう。
《男子リザルト》
1位 Léo Bergère (フランス) 3:55:44
2位 Kyle Smith (ニュージーランド) 3:56:11
3位 Florian Angert (ドイツ) 3:57:37
2022年ロングのトライアスロン・シーンにおいて、前半の大一番となるセントジョージ大会まであと7週間。
4月の2、3日にはアメリカでアイアンマン70.3オーシャンサイド(カリフォルニア)、アイアンマン70.3テキサス、そして南アフリカではアイアンマン・南アフリカ選手権などの注目レースが開催される。
これらを発射台に、2年半ぶりのアイアンマン世界チャンピオンの称号を誰がつかむのか? エントリー選手たちのコンディションは間もなく100%を迎える。