アイアンマン70.3オーシャンサイド速報  5月のセントジョージ・世界選手権前哨戦/ テイラー・ニブ。銀メダルオリンピアンがアイアンマンの主役の一角を担うか?

IRONMAN

出場者にとっては、5月7日のアイアンマン世界選手(アメリカ・ユタ州セントジョージ)に向けた前哨戦になるともいえるアイアンマン70.3オーシャンサイドが、アメリカ・カリフォルニア州で4月2日に開催された。

アメリカ軍海兵隊基地のキャンプペンドルトン内をメインコースとし、2000年からアイアンマンが実施され続けている舞台とほぼ同じくして行われるミドルディスタンスレース。
プロ女子のレースは、アイアンマン世界選手権(ハワイ)4度優勝のダニエラ・リフ(スイス)や、アイアンマン70.3世界選手権優勝(2016年)と2位(2019年)の実績をもつホリー・ローレンス(イギリス)など豪華なラインアップが出場した。

しかし、その中で終始主役を演じたのがテイラー・ニブ(アメリカ/写真下)だった。昨年、東京オリンピック・混合チームリレーで銀メダルを獲得したあと、コリンズカップ、アイアンマン70.3世界選手権(セントジョージ)に続く、3度目のミドルディスタンス挑戦となったレースはまさに圧勝。活動の舞台をミドル〜ロングに移し、そのさらなる可能性を証明してみせた。

スイムでは持ち前のスプリント力(23分22秒)を見せてトップで上陸。
バイクトランジションで、トッププロとしては珍しく靴下を履く行程を経たため出遅れるものの、バイク序盤ですぐに首位を奪還。後続に3分の差をつけてバイクパートを終了する。
彼女は足元だけでなく、使用バイクでも注目を集めた。昨年のミドル2戦では、まだ移行期とあってかオリンピックで使用したロードバイクにDHバーという組み合わせだったが、今回は満を持してトライアスロンモデルを導入。積極的なポジショニングでライバルたちに差をつけ、続くランでもアドバンテージを維持してハイレベルなレースを制した。

昨年8月に行われたコリンズ・カップではマッチレース中でトップタイムをマークし、2021アイアンマン70.3世界選手権では3位を獲得したニブ。TTポジションでの走りも着実に進化していることを印象づけた。
今シーズンもミドルを中心に活動するようだが、フルディスタンスのアイアンマンも確実に視野に入れているはず。オリンピアンからアイアンマン・チャンピオンへという行程を経て、世界のトライアスロン・シーンの中心に躍り出る日も近いのかもしれない。

2位に入ったのは今年1月に南米チリで実施された アイアンマン70.3プコン を制しているブラジルのルイザ・バプティスタ(写真下左)。バイク終了時にニブにつけられた3分差は大きかった。
そして3位にはアイアンマン70.3世界選手権覇者でもあるホリー・ローレンス(イギリス/写真下右)が入っている。

注目を集めていたひとり、ダニエラ・リフは10位フィニッシュと振るわず。その後、規制区間での速度オーバーで失格となっている。来月のアイアンマン世界選手権へのステップレースの位置づけではあったが、大一番での巻き返しはあるのか?
オリンピック3度出場。今シーズンからミドル、ロングへの本格参戦をスタートさせている上田藍(リソル・稲毛インター)は、ジーロング大会(オーストラリア/5位)に続き今年2度目となるアイアンマン70.3で12位(4時間27分23秒)に入っている。

【女子結果】
1位 Taylor Knibb (USA)  4:06:32
2位 Luisa Baptista (BRA) 4:08:45
3位 Holly Lawrence (GBR) 4:09:17
4位 Ashleigh Gentle (AUS) 4:12:21
5位 Jackie Hering (USA) 4:13:46

2位争いはアイアンマン史上希に見る僅差に
プロ男子のレースは2度のオリンピック金メダリスト、そして怪我からの復帰後初レースとなるアリスター・ブラウンリー(イギリス)、5月のセントジョージの有力選手のひとりであるライオネル・サンダース(カナダ)などのビッグネームに注目が集まった。

レースは今シーズンからニューバイク、BMC/Time Machine(写真下)を駆るブラウンリーが5人で構成されたトップ集団の中心を担い、そのままバイクを終了。ランの入りからパワーを溜め込むかのようにペースを保ち、10km手前からプッシュしてトップに立つと、微差ながらもリードをキープ。終始リラックスした走りでレースをコントロールしているかのように見えた。

しかし残り5kmから状況が一変。激しい追撃を見せたカナダのジャクソン・ランドリー(写真下)が18km地点で逆転。そこからアリスター・ブラウンリーはエネルギー切れを起こしたかのように後退し、4位まで順位を下げることとなった。

この男子で最もヒートアップしたのが2位争い。ランで猛烈な追い上げを見せたサンダース(上のフィニッシュ写真右)と、バイク終了後も好位につけていたルディ・ヴォンバーグ(同左/アメリカ)が、最後のフィニッシュロードまでつば迫り合いを見せ同時にゴール。なんと順位は写真判定に持ち込まれ、同タイムながら微差でサンダースが先着した。

2022シーズンからストリーミング・サイト “Outside TV” で新たにライブ放映されるアイアンマン70.3シリーズ。その開幕戦となったオーシャンサイド大会の翌日(4月3日)には、南アフリカでアイアンマン・アフリカ選手権が開催。同日にスペインではミドルディスタンスのチャレンジ・サロウが予定されており、5月のセントジョージに向け準備を進めている有力選手たちも出場する。
アイアンマン・シーズン前半のクライマックスは間もなくだ。

【男子結果】
1位 Jackson Laundry (CAN) 3:45:00
2位 Lionel Sanders (CAN) 3:45:33
3位 Rudy Von Berg (USA) 3:45:33
4位 Alistair Brownlee (GBR) 3:45:55
5位 Ben Kanute (USA) 3:46:32

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