東京五輪のトライアスロン男子のスタートまであと2週間。その舞台を彩るバイク最前線コーナーの第3回目は、今回新種目となる混合リレーにも出場予定。陸上競技1万メートルで27分51秒の個人記録をもち、ラン勝負に持ち込めばライバルたちにとって最も危険な選手となるアレックス・イーが駆るトレックのマドンSLRだ。
アレックス・イー(イギリス)
使用バイク:トレック/マドンSLR
ショート、ロングディスタンスを問わずトライアスリートの使用率が高いトレック。その中でもマドンSLRはエアロロードに分類される。目につくのはやはりボリューム感のある扁平型ダウンチューブで、大型のTREKのマークがさらにフレームの迫力を生んでいる。
初代マドンが登場したのが2003年。トレック最大のストロングポイントといえるOCLVカーボン技術の粋を集め、オールランドバイクの最高傑作として輩出された。その後、同社のラインアップが細分化される中で、マドンはエアロダイナミクスを追求する最翼モデルへと舵をきり開発が続けられている。
その進化のカタチは細部に見受けられる。ディスクブレーキの標準装備はもとより、フレームは最新の800 Series OCLV カーボンを使用し、軽量かつ高強度に仕上げられている。さらには、トップチューブに振動吸収性を調節できる IsoSpeed(アイソスピード)機能を装備。速さ&エアロ効果を追求する中で必然的にフレーム剛性が高くなるエアロロードバイクにあって、ライダーの好みにあわせて乗り味をマイルドな方向へ振ることも可能となっている。これはすなわち走るコース状況によってアジャストすることができるわけで、我々一般ユーザにとっても魅力的なシステムといえる。
このマドンSLRに対し、トレックの軽量オールラウンドモデルの位置づけとなるのがエモンダ・シリーズ。その最高峰となるエモンダSLRは、東京オリンピック代表のマルテン・ヴァンリール(ベルギー)などが使用している。
こちらは エモンダSLRを駆るベルギーのマルテン・ヴァンリール(ナンバー3の選手)。同じトレックでも選手の狙いによってモデルチョイスが違っている点は興味深い
トレックユーザーのオリンピアンにとっては、加速性や高速巡航性など、51.5kmのレースに各々が重視するバイクの特性によってチョイスが分かれているようだ。
<ツール・ド・フランスで使用するチーム>
・トレック・セガフレード(アメリカ)
もちろんメインスポンサーであるトレックを使用する同チームは、マドン(写真上)とエモンダの2モデルを投入。いずれもメタリック基調のファイアーレッドとも表現できる特別仕様カラーが目を引くが、赤✕青のチームカラー・モデルも用意され(写真下)、それぞれセッティングされた仕様(アッセンブルやセットされているパーツなど)をもとに、コース特性や用途にあわせて使い分けられている。
写真左がマドンSLR、右がエモンダSLR。よりエアロ形状に特化したデザインがマドンSLRとなる
メインコンポーネンツはスラムのレッドeTap。ホイールには、これもOCLVカーボンを使用したボントレガーのAeolusディープリムホイールを装着。これらのコンビネーションは、市販の完成車にも同様のタイプがあり、まさにツールで使用されているバイクをそのまま自分が走らせている気分を味わうことが可能といえる。
メインコンポーネンツとなるスラムeTapは、もはやトレック・セガフレードの定番になっているといえる
また市販車同様に、トレック・セガフレードが使用するマドンにももちろん振動吸収性を調節できる IsoSpeed機能がトップチューブ裏側に備えられている。世界最高峰のトップサイクリストたちがどのようなセッティングを施しているのか気になるところだ。
全体的にアメリカ色の濃いバイクアッセンブルではあるが、タイヤがピレリ(イタリア)のチューブラーだったのが印象的。これは足まわりに関してのチームのこだわりなのだろう。
湾曲したトップチューブの裏側にもトレックならではの先端機能が備えられている
ピレリのタイヤを標準使用する証のマークがフロントフォークに見ることができる
上記のマドンSLRは主に平坦ステージで採用されているが、好みによって同じ(平坦)ステージでも軽量オールラウンドバイクのエモンダSLR(写真下)を使用していたライダーも数名いた。これは裏を返すとエモンダSLRの走行適応性能の高さの表れで、全体的にコンパクトでバランスのとれたフレーム、そしてダウンチューブにエアロ形状デザインをもたせているところからも、メーカー側の狙いがくみ取れる。もちろんメインは山岳ステージでの使用を前提としており現在、ピレネーを舞台にしているツールでその本領を発揮している。ちなみにエモンダのコンポーネンツ、パーツアッセンブルもマドンとほぼ同じ仕様となっている。