昨年10月のアイアンマン・ハワイのあと、とりまく環境が最も変わったアスリートといえるのがチェルシー・ソダーロだろう。
フルディスタンス2戦目にしてハワイ初出場だった彼女は、レース前までは有力選手に挙げられることもなかった。しかし、本番ではランパートでのドラマティックな逆転劇でワールドチャンピオンのタイトルを獲得。出産から1年半後での優勝パフォーマンスにも大きな注目が集まったことは記憶に新しい。(※写真をタップするとフルサイズで見られます)
今年4月のアイアンマン70.3オーシャンサイドにて。愛娘のスカイとはレース会場でもいつも一緒だ
オフを経て彼女はバイクやウエア、シューズ、ニュートリションなど多くのメーカー、スポンサーと新たに契約してシーズンに挑んできている。
それはすなわち、今まで以上に注目を集め、結果を求められる立場になったことを意味している。レース会場では必ずメディア対応に追われるなど、感じるプレッシャーも以前とは比べ物にならないはず。
チェルシーの2023シーズンはこれまでとは違った景色でのスタートとなっている。
6月に行われたチャレンジ・ロートのバイクチェックイン。2023シーズンのニューバイクにも注目は集まる
期待をかけられ、結果を残し続けるーー。
シンプルな表現ではあるが、プロとして求められるタスクであり難しさだ。これを乗り越えた者のみがプロアスリートのトップとしての地平を切り開いていくことができる。
一方で今年の彼女のリザルを並べて見ると、
・4月1日/アイアンマン70.3オーシャンサイド → 2位
・5月6日/PTOヨーロピアン・オープン(ミドル)→ リタイア
・6月25日/チャレンジ・ロート → リタイア
・8月19日/PTOアジアン・オープン → 3位(写真下)
と決して満足といえる結果を残せているわけではなかった。PTOアジアン・オープンのフィニッシュ時の表情(タイトル写真)は、そういった心境も表していたのかもしれない。
しかし、過程がどうであれチェルシーのこの競技、そしてレースに臨む姿勢には一貫してブレないものがある。
それは女性として、母親として、自身の競技キャリアを高め続けていくこと。そして、女性アスリートのスポーツでの活躍の場、可能性をさらに広げていくフロントランナーとしての歩みを止めないこと。
そんな中、彼女は今年4月1日に行われたアイアンマン70.3オーシャンサイドのレース前に、獲得した賞金を、銃や暴力から家庭を守るために活動する公共安全機関に寄付すると発表(獲得賞金は5,000ドルだった)。自身のポリシーを様々なかたちで表現している。
スポーツを追求し、母親としての役割を同時に担える環境は、適切なサポートがあれば誰も得ることができる。すべての女性たちにはその時間と空間を得る権利があることを知ってほしい、と発信し続けているチェルシー。
そんな彼女がレースで最も望むのは、家族のため、愛娘スカイのため、さらにはチェルシーの競技活動を支え続けるスタッフたちのために、与えられた舞台で最高のリザルトを残すことだ。
その次なるクライマックスはもうすぐ。
“チーム・ソダーロ” の新たな挑戦がスタートする。
〜チェルシー・ソダーロの決戦バイク〜
【キャニオン/Speedmax CFR】
今シーズンからキャニオンへとスイッチしたモデルはもちろん Speedmax CFR。ヤーン・フロデーノやパトリック・ランゲといったロングのトップ選手を中心に活躍するファストバイクで、彼女のほか、2023年に新たにサポートを受けるアスリート も多い。
写真は今年6月25日にドイツで実施されたチャレンジ・ロート時のもの。
特徴としては、多くのロング・トップ選手がノウハウ提供を受ける SWISS SIDE(スイスサイド)の、ポジショニングやアタッチメント・セッティングを反映させている点だ。
ホイールには、その SWISS SIDE とつながりの深い DTスイス の『ARC 1100 DICUT(フロント/ディープリム、リア/ディスク)』をメインに使用。
そして、ドイツ・ロートで彼女が使用した唯一無二のパーツがディレイラー。見ての通り、セラミックスピード・OSPWディレイラーのカバーにスカイ&チェルシーが描かれており、彼女の足元に大きなパワーを与えていた。
そして、ハワイでは特別仕様(カラーリングなど/写真下)のモデルが登場。ウエアも統一されたデザインのものが用意され、そのパフォーマンスともにハワイのコースに映える存在となるだろう。
※チェルシー・ソダーロのインスタグラムより