7時間31分54秒。バイクは集団走でのドラフティングOKなど、特別なルールでありながらも フェニックスSUB7&SUB8 プロジェクト(6月5日開催/以下、フェニックス・プロジェクト)で、女性史上最初にフルディスタンス(S3.8km / B180km / R42.2km)8時間切りを達成し、世界のトライアスロン界に衝撃を与えたカトリーナ・マシューズ(イギリス)。
5月7日のアイアンマン世界選手権では2位(写真下)を獲得し、“カット” の愛称でトップ選手としての存在感を確実なものにした彼女は、なんと2019年まではエイジグループの選手としてレースに参加。プロトライアスリートとなる前は、理学療法士としてイギリス軍隊に従事していたという経歴をもつ。
今回のフェニックス・プロジェクトでマークしたランスプリットは2時間46分09秒。基本的に6人のペーサーが引っ張ったチーム・タイムトライアル形式のバイクパートを経てのタイムではあるが、そのバイク180kmでも平均速度は時速45.7kmだった。
そんな、ファスト “カット”の異次元ライドを可能としたのが BMCのTimemachine 01 Disc だ。
「このモデルに乗り続けて3年になります」(マシューズ)。彼女のプロキャリアとほぼ共にしてきたといっていいバイクに、「メーカーが手作業で仕上げた機能が素晴らしく、滑らかなデザインもお気に入りなんです」と愛着を語る。
「シートポストの取り付け位置で、前乗りのトライアスロンポジションとUCI規格のTTポジション両方を選ぶことができるし、ハイドレーションやストレージのアタッチメントも充実しています。フェニックス・プロジェクトのバイクパートでも全幅の信頼をおくことができますね」
ディスクブレーキ化されたフロント部には、乱気流を抑えるためのキャリパーカバーを設置(写真上参照)。制動部とロータまわりの気流を整え、エアロ機能を向上させるなど、モデルチェンジごとにアップグレードされ続け現行デザインに至っている。
この BMC のTTバイクは、サイクルロードレースの最高峰、ツール・ド・フランスでは昨年2チームが採用しており(写真下)、まさにロードTTからトライアスロンまで、『速く走る』ためにだけに仕上げられたプロダクトといえる。
写真右は2021ツール・ド・フランス個人総合3位のベン・オコナー(オーストラリア)のTTバイクの部分カット。そのツールで採用されることはないが、シートポストの取付位置でふたつのポジション出しが可能となる
「実は(フェニックス・プロジェクトに向けての)トライアスロンバイクの集団走(ドラフティング)トレーニングは初めてだったのですが、慣れるのにもさほど苦労しませんでした」というレース直前のコメントも、バイク性能からくる信頼感が大きかったはず。
そしてレース本番の舞台では、本人がストロングポイントと自覚している、身についた規律と忍耐力が目標達成に大きく寄与したようなパフォーマンスで8時間を切るタイムをマーク。今シーズン、もっとも注目されるアスリートのひとりへと躍り出ることとなった。
「最高のチャレンジが達成できて幸せ。(アイアンマン世界選手権、そして今回とハードなレースが続いたので)このあと少し休養をとって、シーズン後半に臨むつもりです。まずは8月の コリンズカップ ですね」と、昨年も出場した注目の高額賞金レースに照準をあわせる。
レースフィニッシュ後、サポートアスリートたちと記録達成を祝うマシューズ
このコリンズカップには、同じく男子で7時間切りの偉業(6時間44分25秒)を成し得たクリスティアン・ブルンメンフェルトもすでにノミネートされており、順調にいけば出場してくるはず。
今夏、スロバキア西部のシャモリンで行われるマッチレースは、10月のハワイ前のビッグイベントになることは間違いない。
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