これも運命のめぐり合わせなのだろうか?
4月22日にアメリカ・テキサス州ウッドランズで開催されたアイアンマン・テキサスの女子レースを制したカット・マシューズ(イギリス/写真中央)。
昨年5月にアメリカ・ユタ州セントジョージで行われた アイアンマン世界選手権 で2位を獲得し、同年10月の アイアンマン・ハワイ でさらなる飛躍を目指すも、レース直前にバイクトレーニング中の事故で大ケガを負うという不運に遭遇。その後半年間、不屈の精神でのリハビリを経て取り戻したアイアンマンディスタンス・トップの舞台が今回のテキサス大会となる。(※写真をタップするとフルサイズ写真が見られます)
彼女に悪夢が襲ったのは昨年9月末、今回のコースからわずか1マイル離れた場所での出来事だった。
交差する車との衝突事故。
「これまで聞いたことのない大きな金属の衝撃音が起きた。僕の目の前で…… 。本当にとんでもないことが起こってしまったとすぐに分かった。地面ついた血のあと大きく広がっていき…… これ以上は、ここでは言葉にできないよ」。当時のインタビューにそう答えているパトリック・ランゲ(ドイツ)。彼女と一緒に、翌月に控えたハワイ(アイアンマン世界選手権)に向けトレーニングを行う中での出来事だった。
「頚椎、頭蓋骨などに損傷を受け、当時まわりの人は(私が)歩けるように戻れるのかさえ分からなかったようでした。深く失望しましたね。まるですべてを失ってしまったように。でも一方で現実を受け止めて、3年の間でレースに戻ろうと考える自分もいました」(マシューズ)
実は彼女はこのあと、出場する予定だった10月6日のアイアンマン選手権観戦のため、アメリカ本土から5時間のフライトを経てハワイ島カイルア・コナの地を訪れている。
首にコルセットを巻いた痛々しい姿ではあったが、表情は笑顔に満ち溢れ、すでに(3年先と最初は考えていたものの)来シーズンへの復帰が待ち遠しいといったようなエネルギーを発していた。
実際、彼女は今年4月1日にアメリカ・カリフォルニア州で行われた アイアンマン70.3オーシャンサイド大会(写真下)でレースへの復帰を遂げている。
北米アイアンマン・シーズン開幕を告げる、ハイレベルなメンバーが名をそろえた70.3オーシャンサイド大会で、負傷明けとは思えない存在感(女子3位)を見せたマシューズ
そしてオーシャンサイド大会の3週間後。心配されていた疲労の問題もなく、フルディスタンス・アイアンマンに約1年ぶりの復帰を果たしたマシューズは、ランで2時間49分32秒という驚きのタイムをマーク。スイムの出遅れ、さらにはバイクの伸び悩みからの大逆転劇を演じてみせた。
半年前の自転車事故に関わった者たちにとっては、信じがたいパフォーマンスだったに違いない。
「まだスイムもバイクも課題だらけで良い一日ではありませんでした。でも、レースを楽しむことはできませんでしたが、私をスタートラインに導いてくれた(自分の)チームに感謝しています。最後はどうやってフィニッシュしたのかわからないくらいでした」と、感慨深さを表していた。
計り知れない苦しみと葛藤、そして大きなハンデを乗り越えてトップシーンに戻ってきたマシューズ。
まだプロキャリア4年の彼女のベクトルはすでに、昨年、夢に終わったハワイでのアイアンマン世界選手権に力強く向かっている。
【女子プロ上位リザルト】
1位 Kat Matthews (GBR) 8:32:52
2位 Maja Stage Nielsen (DEN) 8:34:51
3位 Jocelyn McCauley (USA) 8:45:45
このヒューストン北部、ウッドランズで繰り広げられたレースには世界57カ国、そして米国内49州から2,000人を超えるアスリートが集結。
北半球の2023フルディスタンス・アイアンマンもいよいよ本格化してきた。
男子レースで優勝したのは、昨年のアイアンマン・フランス(ニース大会/2023年男子のアイアンマン選手権と同じロケーションで実施)を制しているルディ・ヴォンバーグ(アメリカ/写真上)。3位までの差が21秒という大接戦だった
【男子プロ上位リザルト】
1位 Rudy von Berg (USA) 7:44:51
2位 Robert Wilkowiecki (POL) 7:45:04
3位 Matthew Marquardt (USA) 7:45:12
【アイアンマン・テキサスのダイジェスト動画】© IRONMAN
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