2022年ヨーロッパ&中東エリアでの、アイアンマン・シリーズのキックオフ戦となるドバイ大会が3月5日に開催された。
世界屈指の観光立国でもあるUAE(アラブ首長国連邦)で行われるレース。年々注目度が増す、新興トライアスロンエリアといえるこの中東で行われたプロ・カテゴリーには男女とも、今年も話題を提供し続けるであろうビッグネームたちがエントリー。それぞれのシーズン開幕を迎えることとなった。
ドバイ大会の大きな特徴のひとつはコースレイアウトだ。突出したラグジュアリー度を誇る公称“7つ星”ホテル、ブルジュ・アル・アラブを臨みながら泳ぐスイム。近未来都市を彷彿とさせる中心街を走り抜ける往復コースのバイク。そしてペルシャ湾をバックに整備されたランニングコースが映えるサンドビーチ沿いを1.5往復する。
スイムはドバイのランドマークのひとつ、ブルジュ・アル・アラブホテルをバックに泳ぐ photo/Activ Images for IRONMAN
注目のプロ・カテゴリーは男女とも、非常にレベルの高いレースとなった。
プロ女子を制したのは2021年のアイアンマン欧州チャンピオンに輝いているローラ・フィリップ(ドイツ/写真中央)。これで自身のアイアンマン70.3の勝利数を、なんと16に伸ばすこととなった。
接戦で2位となったのはアイアンマン世界選手権(ハワイ)で4回、アイアンマン70.3世界選手権で5度チャンピオンに輝いているダニエラ・リフ(スイス/写真下)。昨シーズンはなかなか思うような成績を残せなかったが、今回フィリップに次ぐ3時間56分55秒の快速タイムをマークして完全復活を印象づけている。
また、ローラ・フィリップ、ダニエラ・リフたちは今回のレース賞金を、現在ロシアの侵攻を被っているクライナを支援する諸機関などへ寄付することを事前に公表(1位・2,500ドル/約290万円、2位・2,000ドル/約230万円)。
「我々が戦うべきはスポーツで、決して戦争ではない」を合言葉に、自分たちが今できることを発信している。
こういった行動は今後、アスリート個人だけではなく、大会としてのウクライナ支援への取り組みにも大きな影響を与えていくこととなるだろう。
男子はワールド・トライアスロン・ランキング1位(3月6日時点)、そして東京五輪2020にベルギー代表で出場しているマルテン・ファンリール(写真下)が、昨年のディフェンディングチャンピオンのダニエル・ベェケゴー(デンマーク)とバイク終了までマッチレースを繰り広げたが、その後のランで引き離し初制覇。男子のレコードとなる3時間26分06秒を叩き出した。フラット基調のコースとはいえ、これは世界のライバルたちも注目せざるを得ないパフォーマンスといえるだろう。
なお、レースの中心のひとりになると見られていたクリスティアン・ブルンメンフェルトは、バイクで本来の走力を発揮できず3時間49分07秒の10位に終わっている。
今回のドバイを皮切りに、世界のアイアンマン・シリーズの注目は、次の3月19日のアイアンマン70.3ランサローテ(スペイン)へと向けられていくことになる。
ところで、今回の男女優勝タイムはハーフ・アイアンマンはもちろん、ワールドクラスのミドル〜ロング・レースのさらなる高速化を強く印象づけることになった。それはすなわち、世界のトップトライアスリートたちの進化が、さらなる未踏の領域へと進む可能性を示唆している。
5月にはアメリカ・ユタ州セントジョージでアイアンマン世界選手権が行われるが、このドバイ大会の主役たちも虎視眈々とタイトルを狙っているはず。その後の6月にはドイツの北東部・ドレスデンにてフル(アイアンマン)ディスタンスで男子7時間、女子8時間のタイム切りをターゲットとした『フェニックス・サブ7&サブ8プロジェクト』も実施される。
世界のトライアスロン・シーンの高速化はとどまる留まるところを知らないフェーズに入っているといえる。
【男子プロ結果】
1位 Marten Van Riel (ベルギー) 3:26:06
2位 Daniel Baekkegard (デンマーク) 3:27:54
3位 Pierre Le Corre (フランス) 3:33:01
【女子プロ結果】
1位 Laura Philipp (ドイツ) 3:53:03
2位 Daniela Ryf (スイス) 3:56:55
3位 Lottie Lucas (アラブ首長国連邦) 4:07:03