アンドリュー・メシック氏がアイアンマン・グループ(IG)の社長兼CEOを退任することが発表された。
2011年よりIGの前身となるワールド・トライアスロン・コーポレーションのCEOに就任したメシック氏は、以降、シーリーズ大会の発展・拡大に手腕を発揮し、現在のネットワーク繁栄の最大の功労者といえるだろう。
それは、今回グループ主催者が発信したリリースを追うと瞭然だ。
彼のCEO就任以降、アイアンマンおよび アイアンマン70.3 イベントは、新たに 30 カ国以上で開催されるようになり、アイアンマンのレース数で見ると(2011年までの)25 レースから 44 レースに増加。アイアンマン 70.3 では 54 から 124 レースを数えるまでになっている。
2015年からは女性の参加率向上を目的としたプログラムなどを積極的に導入し、着実に実績を積み上げ、またそれらと並行して、トライアスロン以外でのエンデュランススポーツのネットワークも拡張させてきた。
具体的にはウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)と提携しUTMBワールドシリーズの創設や、アメリカ発祥のロックンロール・マラソンシリーズ、 ヌーサ大会を始めとするオーストラリアの老舗人気トライアスロン数大会の買収など。
さらにはサイクリング、バーチャルなイベントなど、ジャンルを問わず大衆参加型エンデュランススポーツを通じ、参加者、関連者に多くのメリットを提供する企業として目指を掲げ、成長を遂げてきいる。
2020年から迎えた新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックの中では、独自の運営プロトコールを模索・確立し、2022年からほぼ通常(コロナ前)のアイアンマン・シリーズ運営にこぎつけていてもいた。
それらの中心的役割を果たしていたのがメシック氏といえるだろう。
そのメシック氏は、 2011 年にアイアンマン グループに加わる前は、NBA運営の要職やメジャースポーツの運営会社社長を歴任するなど、スポーツビジネスのスペシャリスト。一方で、自身もアイアンマン4レース、そしてアイアンマン70.3世界選手権を含む10を超える70.3イベントに出場し、完走するなど生粋のアスリートというのは知られた話でもある。
一方で、そのアイアンマン拡大路線に意義を唱える向きがあったのも事実だ。
特にその声が拡大されたと一般的に認識されているのが、2022年にアイアンマン世界選手権をハワイで2日間開催すると発表されたときだろう。
たとえば、その発表後の2022年5月にアメリカ・ユタ州セントジョージで開催されたアイアンマン世界選手権のレース前会見ではこんな光景があった。
冒頭の主催者挨拶(メシック氏)のあと、大会に対する質問を受け付けたところ、セントジョージのことではなく、この5カ月後のハワイに集中したのだ。
「10月のハワイの2日間開催についてどう考えるか?」「2日間のマネージメント・プランは?」「参加者増によりハワイのステータスが下がるのでは?」といった内容に。これには少し、主催者側も動揺した雰囲気に見えたのは事実だった。(写真下/セントジョージ選手会見時)
ハワイ、ニースでの世界選手権の男女隔年開催。大きな変革のシーズンに
そして、昨年のハワイ2日間開催のあと、今年1月にアイアンマン世界選手権を男女に分け、既存のハワイ(今年は女子)とフランス・ニース(男子)で2026年まで隔年で実施すると決定したのは周知のとおり。さらなる決断、変革を遂げるシーズンとなった。
こちらも賛否が挙がっているのが現状といえるが、すでに向こう4年の世界選手権カレンダーは決まっており、9月のニース大会のコース詳細も発表されている。
今年のアイアンマン世界選手権男子は9月のニースで実施される
そんな中でのメシック氏の退任発表だが、海外メディア報道によると、本人にとっては以前から予定していたことであり、すでに今後の新体制に大きな期待を寄せているという。新たなCEOの任命はこれからで、メシック氏はアイアンマン・グループには取締役として今後も関わることも決まっている。
一般企業としてみれば普通にあり得る人事だろうが、どのような立場であれメシック氏の、大きな変革を遂げるシーズンを見届けたいという気持ちは強いはずだろう。
今年1月のニースのコース発表時に立ち会ったメシック氏(左)。このときすでにCEO退任を決めていたという
そんな中、世界のアイアンマン・シリーズは引き続き活況を呈しながら2023シーズンのピークを迎え、そして9月と10月に大きなスポットが当てられる。
それぞれの世界選手権が、どのような最高峰のレースとして開催されるのか。そこでは、新たなアイアンマン・グループの方向性を見ることとなるだろう。
コメント