ツール・ド・フランス(TDF)から見るトライアスロン的バイクを考察してみる。現在ので各チームが使用しているバイクの特徴のひとつに、フレームがより扁平型にデザインされ、さらなる空気抵抗の削減を狙ったいわゆる「エアロロードバイク(以下、エアロバイク)」をほとんどのチームが投入している点が挙げられる。
この「空気抵抗の削減」はトライアスリートの命題でもあるが、ツール・ド・フランスを走るバイクを見てみると以下の3つに大きく分類できる。
(1)平坦基調のステージをメインとした前述のエアロバイク
(2)山岳コースはもちろん平地のコースまでカバーするベーシックなフレーム形状の軽量ロードバイク
(3)タイムトライアル(TT)バイク(乱暴だがここではトライスロンバイクと同義とさせてもらう)
である。各チームは主にステージの特性によってこれらの2〜3タイプのバイクを使い分けているが、昨年は出場全22チーム中、実に18チームが上記3種類のモデルを導入。つまり合計18チームがエアロバイクをラインアップさせていたこととなる。
このエアロバイクの特性を説明するために最も適しているチームといえるのが、トライアスリートにも人気のサーヴェロを使用するチーム・サンウエブだ。昨年は豊富なモデルラインアップの中から、TTバイク(P5)、エアロバイク(S5)、ベーシックなロードバイク(R5)の3種類を投入。今年はまだ第2ステージを終えたばかりなので、その全容は定かではないが(個人タイムトライアルは第20ステージのみ)、エアロバイク(S5)、ロードバイク(R5)がすでにお披露目されており、TTバイクでもまず間違いなくモデル変更はないといえる。
このように使い分ける理由を昨年、メカニックのピム・ヘームスケルクさんに聞いてみた。
「各選手の特性に合うようヒルクライム用バイクと、年々高速化するレースに対応するためにエアロバイクとを使い分けている。クライマー用のロードバイクはパーツも含め徹底的に軽く、そしてオールラウンダーとスプリンターには『より速く、より強く』を目指し空気抵抗に優れたエアロバイクを通常ステージでチョイス。そしてタイムトライアル・ステージではTTバイクという組み合わせだね」
このエアロバイク「S5」は、他チームが用いるモデルの中でもデザインが際立っている。シートチューブのみならずダウンチューブをもタイヤの形状に沿った湾曲部分がデザインされ、フレーム断面の扁平化も向上。ヘッドまわり前面をフルカバーするフロントフォーク、さらにはステムとハンドルを一体化。そしてケーブル類をすべてフレームに内蔵化させるなど、エアロダイナミクスを徹底的に追求した形といえるだろう。
「エアロダイナミクスの追求」は、単独走行が前提となるトライアスリートにとっては、言うまでも無く大きな武器になる。
もちろんレースの使用環境にもよるが、走行中、空気抵抗の削減性能を最大限に引き出だすために設計されたのがトライスロンバイクだ。一方で近年、各メーカーが輩出しているエアロバイクの進化は目を見張るものがある。
この世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスのバイクトレンドは、今後バイクをチョイスするときの指針として、ぜひ知っておきたいところだ。