2023年アイアンマン70.3世界選手権のDAY2。男子レースが8月27日にフィンランド・ラハティで行われた。
前日の女子大会と同じく、プロ男子カテゴリーからレースデイが開幕。エリートの結果は新鋭と中堅のドイツ勢3人が表彰台を独占するという結果で幕を閉じた。(※写真をタップするとフルサイズで見られます)
霧がかった26日の女子スタートから一転して、薄日も差し込む明るいコンディションの中レースはスタート。
世界選手権の1.93kmスイムは非常にスピーディーにレースが進む。22分43秒にトップ選手が上陸すると、その後1分30秒の間に28名もの選手がトランジションに駆け込む中、注目のクリスティアン・ブルンメンフェルト(ノルウェー)は1分16秒遅れの26位アップだった。
続く90.1kmのバイクパートに入ると、コースが進むに連れ、ここ2年ほどの大会トップが占めるリーディングボードと様相が違ってきている現状に皆が気づき始める。
これまで安定した上位成績を残し続けている北米勢では、たとえば昨年70.3世界選手権2位のアメリカのベン・カヌート(写真下)やサム・ロング(アメリカ/一昨年3位)などが伸び悩み、また確実にレースの中心を担うであろうと目されていたブルンメンフェルトや他の有力欧州勢も同様だった。
そんな彼らを置き去りにして、目まぐるしいトップ争いを演じたのが、このレースに照準を合わせてきた新旧欧州勢だった。
レースの舞台は時差など移動負担の少ないフィンランド南部で、コンディションも整えやすかったのだろう。
対する前述の有力選手の多くは、今シーズン前半から世界各地で行われてきた注目大会を転戦してきており、その対比が8月後半のレースに現れていたのではないかと推察する。
4位に入ったフランスのマチス・マルギリー。2023シーズン前半・ヨーロッパのミドルディスタンスレースを中心に出場してきている
まさに過去2年のアイアンマン70.3世界選手権とは別のレースを見ているかのようなトップ争い。
それを際立たせたのが、ラン21.1kmを1時間11分02秒で駆け抜けて優勝したドイツのリコ・ボーゲン(写真下)だった。
22歳の新鋭は7年前にスイマーからトライアスロン競技に専念。コロナ禍前はジュニアで、その後EUカップやドイツ国内選手権、さらにはロングディスタンス世界選手権などワールドトライアスロンのレース中心にキャリアを積んでいく中、今年5月にドイツで行われたアイアンマン70.3クライヒガウ大会で優勝。
これから世界上位ランカーの仲間入りを果たそうかという中、一気に世界タイトルを獲得する快挙を成し遂げた。
「ブルンメンフェルトをはじめとするビッグネームが並ぶ中、勝つことができるなんて本当に信じられない。レースはレベルの高いものだったが、ランには自信がありました」と、新鋭らしからぬ冷静さも兼ね備えているようだ。
この22歳での男子優勝は、2019年のニース大会で勝利したグスタフ・イデン(ノルウェー/当時23歳)の記録を上回る、アイアンマン70.3世界選手権・男子タイトルの最年少記録にもなっている。
そして2位に入ったのは、こちらはミドルディスタンスレース上位常連のフレディリック・ファンク(写真左)、そして3位もこれまでミドルを中心に活動してきたヤーン・ストラトマン(同右)と、ドイツ勢が表彰台を独占することになった。
フルディスタンスも含むアイアンマン世界選手権の歴史を振り返ってみると、ドイツ人アスリートが表彰台を独占したのは、アイアンマン強国の象徴となった1997年のハワイ(1位:トーマス・ヘリーゲル、2位:ユルゲン ザック、3位:ロータ・レーダー)、そして2016年のハワイ(1位:ヤーン・フロデーノ、2位:セバスチャン・キーンレ、3位:パトリック・ランゲ)以来のこととなる。
今シーズンでヤーン・フロデーノ、セバスチャン・キーンレが引退する中「ドイツの新たな時代の幕開けとなった70.3世界選手権」と言われる日がくるかもしれない。
一方、レース前の優勝候補ナンバーワンだったクリスティアン・ブルメンフェルト(写真上)は、8月の過密スケジュール が完全に悪い方向に出てしまっていた。
バイクの30kmを過ぎたあたりから明らかに精細を欠き徐々に後退、90.1kmのバイク終了時にはトップとの差が約11分まで広がり、最終リザルトはフィニッシュした41人中35位。トップと21分差だった。
彼はこの前週に PTOアジアン・オープン(シンガポール)に出場しているのだが、このシンガポールからフィンランドに移動しての連戦を予定していた選手の中にはすでにコンディション不良を抱えていた選手もいて、(シンガポール大会3位だった)アメリカのジェイソン・ウエストなどは出場を見合わせていた。
いずれにせよ、ブルンメンフェルトの70.3世界選手権連覇はコンディション不良により実現することはなかった。
<プロ男子・上位リザルト>
1位 Rico Bogen (GER) 3:32:33
2位 Frederic Funk (GER) 3:33:26
3位 Jan Stratmann (GER) 3:34:11
4位 Mathis Margirier (FRA) 3:35:05
5位 Joshua Lewis (GBR) 3:36:45
6位 Youri Keulen (NED) 3:37:57
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